人間の身体は、加齢に伴って、少しずつ身体機能が低下していくのは自然なことです。そのため、栄養価の高い食品を食べたり、機能維持のための運動を行って維持に努めています。しかし老化現象を止めることは難しいです。
医療や介護現場で「喀痰」という用語が使われます。では、「喀痰」とはどういう意味なのか、医療と介護ではどのように異なっているのかについて説明していきましょう。
喀痰とは
喀痰とは、辞書を調べると、「カクタン」と読み、痰を吐き出すことを意味しています。
身体から痰が作られるときは、呼吸器から分泌された、異物をからめとって身体の外へ排出しようとするときです。粘液状で塊となっています。痰の形状も体調によってさまざまです。白くねばねばした痰、黄色で強い粘りがある痰、粘液性と膿性が混じった痰、水のようにサラサラで無色透明な痰、漿液性と粘液性と膿性がまじった痰などあり、病状観察に形状把握は有効です。
一般的な人の場合、痰が体内で作られた異物として体外へ排出しようと咳をします。咳は、身体を守る防衛反応のひとつです。しかし加齢に伴う身体機能の低下や病気の後遺症による麻痺や嚥下障害などの原因により自分で咳と一緒に痰が体外に排出できない高齢者は肺炎などの感染症になりやすい傾向にあるため、注意が必要といえます。
痰が多くなる原因として考えられる病気は第一に風邪です。しかし、通常の風邪が何週間も続くことは稀です。その他、肺炎や気管支炎でも病原菌を排除する反応の結果として痰が増えます。肺炎や気管支炎の場合、高熱や全身倦怠感や食欲不振などの痰以外の症状も見られるため、初期の痰を観察し、必要な治療を早期に受けることが大切です。
自分で痰を体内から排出することが困難な人の場合は、本人の力以外の方法で体内から排出することが介護者側に求められます。医療的に痰を出しやすくする薬を服用したり、吸引器でたまった痰を吸い取ったりして病気の予防に努めています。
喀痰と排痰の違い
喀痰は、咳と一緒に痰を体外に排出することで、排痰は痰を体外から排出ことは同じですが、痰がたまる前に予防として痰を体外に排出することに主眼を置いています。痰は体内にたまっていると、身体に悪い影響を与えます。例えば、常に痰がたまっている状態では感染症も引き起こしやすく、肺炎などの病気にかかりやすいです。また痰が気道にたまっていると呼吸をするときに気道抵抗が増加し、呼吸苦になりやすく、結果、息切れが強くなることがあります。その他、痰が常にたまっている状態のため、身体は昼夜問わず、喀痰しようと咳を誘発します。咳が続くと疲労や不眠の原因となります。以上のことから病気になる前の予防的処置として排痰が行われます。
排痰をすることによって、感染予防や息切れの軽減などにつながります。そのため、日常の排痰が重要になります。
排痰の一番簡単な方法は、体位排痰です。痰を出しやすくする姿勢を取り、重力で痰を取り除く形になります。痰がどこに溜まっているかがわかれば、時間はかかりますが、身体に負担なく排痰ができます。
肺の前側にたまった痰を出す場合
仰向きに寝て腰のあたりにクッションを挟みます。
お尻を高くして安静を保ちます。
肺の後ろ側にたまった痰を出す場合
うつぶせに寝て腰のあたりにクッションを挟みます。
お尻を高くして安静にします。
その他、咳払いであったり、ハッフィングといって呼吸法を行ってから咳をして痰を出す、排痰器具の使用などがあげられます。
看護での喀痰
喀痰は、痰を排出することですが、高齢者の多くは身体機能の低下により自分の力で吐き出すことができない人もいます。痰をそのままの状態にしておくと、少量であったとしても窒息や呼吸困難におちいる原因となる可能性もあります。また肺炎などの感染症のリスクも高まります。そのため、看護では自分の力で喀痰ができない場合、吸引器を使って喀痰吸引を行う場合が多いです。
喀痰吸引は医療処置として医師や看護師など医療従事者が基本的には行うことになっています。しかし介護福祉施設などの利用者の重度化に伴い、病院以外の福祉施設で喀痰吸引が必要な利用者が年々増えてきました。法整備がされていない時期は、看護師不在の夜間帯などの時間は基本的に喀痰吸引を行わない施設もありました。喀痰吸引が必要な利用者は時間を問わない現状もあり、だからといって看護師がすべて行うことは人数的にも困難なため、口腔内に限り、介護職員も喀痰吸引ができるようになりました。気管の中からの喀痰吸引は今まで通り、医師や看護師など医療従事者に限定されています。口腔内の喀痰吸引もすべての介護職員ができるわけではありません。一定時間の喀痰研修を受けた介護職員や喀痰吸引研修を養成施設で受けた介護福祉士、介護実務者研修修了者などに限られています。
自己喀痰
喀痰は吸引器などチューブで無理やり行うより自分で吐き出せるほうが身体への負担は少ないです。痰を出す機能は加齢とともに衰えてきますが、なるべく自分で出しやすくする方法もあります。
水分を多めに摂取する
痰が多くなるときは体内が自己防衛をしているときでもあります。水分を多く摂取することにより免疫を高める効果があります。
のどの清潔を保ちます
水でのうがいの他、塩を少量まぜても良いでしょう。定期的に行い、のどの通りを鍋原カニしましょう
加湿器を利用する
部屋の湿度を保つことにより痰が柔らかくなり、喀痰しやすくなります。
温かい飲み物を飲む
温かい飲み物をゆっくり飲むことにより気管内の痰が柔らかくなり、自分で喀痰しやすくなります。また喉に絡まった痰が切れやすくなります。
タバコを吸わない
タバコを吸うと声帯が乾燥します。喉は潤いを求めて痰を作り出してしまい、悪循環になります。痰を多くしてしまっては意味がないため、タバコはやめましょう。
乳製品の過剰な摂取は避ける
乳製品を摂取することで痰が多くなるわけではありませんが、人によっては脂肪分の多い牛乳を摂取することによって濃い粘性の痰を誘発する場合があるためです。濃い粘性の痰は自分で吐き出しにくいです。
痰は飲み込まない
痰は咳と一緒に出る場合が多いです。咳と一緒に排出した痰をまた体内に入れてしまうと気管にこびりついてしまう恐れがあります。ティッシュなどを持ち歩き、痰は吐き出す癖をつけましょう。
喀痰と看護
喀痰から病気の早期発見へ
看護では喀痰はいろいろな病気を早期発見する上で重要な情報になります。
痰の色、形状だけではなく咳の仕方、咳の音など病気によって特徴があり、初期段階の予測を立てることができます。喀痰の特徴によって検査や処置を行い、病気を早期発見することは重症化を防ぐために重要なことです。
看護では喀痰の特徴についてもよく知っておく必要があります。
色の観察
□ 透明
アレルギーや喘息などが考えられます。細菌やウィルスといよりも体の防衛機能が過剰に働いていたり、体を守ったりするときに透明な痰が出ます。
□ 黄色
黄色や緑色など濁った色の痰は細菌やウィルスに感染していることが考えられます。体の免疫が体に侵入してきた外敵と戦うことで膿が出て黄色や緑色の痰になります。
□ 赤褐色
赤褐色、赤、茶色の痰は血液が混じっている可能性があります。肺や気管、喉、口腔内など呼吸器のどこかに出血が起きています。
形状の観察
□ 水っぽい
水っぽい喀痰は透明であることが多く、原因はアレルギーや喘息と考えられます。
□ 粘っぽい
透明であれば細菌感染は考えにくいですが塊となって気管を塞ぎやすいので注意が必要です。粘っぽくて濁った喀痰は感染症などで肺が炎症を起こしている可能性があります。
咳の仕方
□ コンコン
乾いた音の咳をしている場合はまだ喀痰の排出が少ないと考えられます。風邪の初期症状などに見られます。
□ ゴホゴホ
喀痰の排出が起きています。肺が炎症を起こしている可能性があります。
□ ゼイゼイ
喘息や結核など肺の奥が炎症を起こしている可能性があります。
□ 咳をしない
高齢者では喀痰があっても咳をほとんどしないということがあります。これは異常がないのではなく、咳をする機能が低下している状態です。たん吸引を行わないと窒息や低酸素状態、肺炎などを起こしてしまいます。
まとめ
喀痰は高齢者にとって命にかかわります。喀痰とは、咳と一緒に痰を体外に排出することであり、排痰は、痰がたまる前に予防として痰を体外に排出することです。痰を体内から排出することは同じですが、意味が異なります。喀痰の仕組みを理解し、高齢者が安心して暮らせるように努めていきたいですね。
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