家族に介護が必要になった時、家族だけではどうしても支えきれないことがたくさんあります。
この制度は、介護が必要な方に費用を給付する制度となっています。保険ですので給付されるためには諸々の手続きが必要です。
しかし、日本には介護保険制度というものがあり、社会全体で高齢者を支えていくという仕組みがあります。
今回は、その手続きの一つである介護認定調査について説明したいと思います。
Contents
介護認定調査とは
介護保険のサービスを受けるためには要介護認定、要支援の認定が必要です。
この認定を受けるためには認定調査という調査を受ける必要があります。
認定調査は、要介護・要支援認定の申請書を提出します。
要介護認定を受けた市町村が認定調査員を派遣し、本人や家族に生活状況を初め、
さまざまな内容を聞き取りしていきます。
介護認定調査の流れに関しては以下の通りです。
認定調査の流れ
認定調査の実施にあたり、市町村区への申請、主治医からの意見書をもらいます。
市町村区への申請に必要なもの
①申請書
②介護保険被保険者証
③健康保険の保険証
④マイナンバーカード
主治医の意見書は市町村区の依頼で主治医が意見書を作成してもらえます。
その後、市町村の職員が自宅を訪問し、本人様、家族に対して聞き取り調査を開始します。
聞き取りの内容に関しては、心身機能という筋力や体の動き、認知機能の状態を確認することや日常生活での手伝いが必要かどうかといった生活状況の聴取がメインとなります。
そしてその結果をコンピューターに入力し、一次判定を行います。
一次判定のあとは二次判定があります。
二次判定は一次判定の結果と訪問調査の結果を照らし合わせ、主治医の意見書と共に判定します。
その後は要介護の通知がされます。結果通知は大体1ヶ月弱かかります。
以上が認定調査の大まかな流れです。
入院中の方で、退院後すぐに在宅での介護の必要がある方に関しては、退院の目処が付き、退院の1ヶ月半前頃に認定調査の申請されることが望ましいです。
74項目の基本調査について
市町村の職員の訪問調査には以下の74項目が調査されます。
調査される項目として「能力」「介助方法」「有無」で調査されます。
「能力」
「能力」に関しては、体の機能と自分の体の機能を把握しているかという項目に分けられます。
調査内容は寝返りや起き上がり、座位保持や立位保持、歩行などを指します。
これらの項目は聞き取りではなく実際実施している動作を調査員が目で確認し評価をします。
実際実施された動きと日常が異なる場合は、日常生活で頻回に行われている方法を基準に評価します。
また、「能力」に関しては認知機能に関しても確認をします。
調査内容としては、生年月日や日付、場所の見当識、季節の理解などを確認します。
「介助方法」
「介助方法」に関しては、日常生活に置いて介助が行われているか行われていないかで判断します。
介助されていないや実際に行われている介助が不適切なケースもあります。
そういった判断を認定調査員がする場合は、その詳細を特記事項に記載し、適切な介助方法を選択し、認定調査会議の判断を受けることになっています。
認定調査員が介助に関して不適切だと判断した場合、できるかできないかということだけでなく、認定を受ける方の生活環境などの状況などを加味された上で判断が下されます。
「有無」
「有無」に関しては、麻痺や関節拘縮といった日常生活を送る上で介助が必要になる要因である症状があるかないかを確認します。
また、認知症の心理症状である徘徊や物忘れなどの有無も確認します。
こういった認知症の心理症状に関しての調査は聞き取り調査がメインとなります。
具体的な74項目に関しては以下のPDFファイルに記載されていますのでよければご参照管さい。
参考:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126242.pdf

介護認定調査項目の判断基準
要介護認定は、まず、市町村区の職員による訪問審査と主治医の意見書を元にコンピュータを用いて判定される一次判定を行います。
その後、二次判定として専門職に介護認定審査会での審査を行い要介護、要支援、自立と判断していきます。
一次判定と二次判定はどういったことを判定するのでしょうか?
ここでは、一次判定と二次判定の内容を解説します。
一次判定
一次判定は、介護認定の申請後、市町村区の職員の訪問調査結果と主治医の意見書を元にコンピューターでの判定になります。
判定は介護の量を5つに分け、この介護量を時間に換算します。これを要介護認定等基準時間と言います。
そしてこのコンピューターを用いた判定では、要介護認定等基準時間に認知症である要介護者へ行うサービス加算を付け加えて判定されます。
一次判定では、以下の5項目の要介護認定等基準時間を算出します。
要介護認定等基準時間五項目
①入浴や食事、排泄、更衣などの「直接生活介助」
②洗濯や掃除、家事などの「間接生活介助」
③認知症から生じる徘徊による探索、不潔行為による後始末などの「BPSD関連行為」
④歩行訓練、日常生活動作訓練といった「機能訓練関連行為」
⑤褥瘡や創部の処置などの診療補助「医療関連行為」
要支援、介護度の要介護認定等基準時間は以下の通りとなります。
要支援1:要介護認定基準時間が25分以上、32分未満またはこれに相当する。
要支援2と要介護1:要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する。
要介護2:要介護認定等基準時間が50分以上70分未満またはこれに相当する。
要介護3:要介護認定等基準時間が70分以上90分未満またはこれに相当する。
要介護4:要介護認定等基準時間が90分以上110分未満またはこれに相当する。
要介護5:要介護認定等基準時間が110分以上またはこれに相当する。
ここで注意しないといけないのは、この要介護認定等基準時間はあくまで一次判定の評価指標でしかないということです。実際の在宅生活での介助時間とは異なります。
そして、在宅で受けられるサービスとも連動していません。
一次判定はコンピューターでされますので全国一律の判定基準ではありますが、個人の抱える問題や介護状態を審査結果に反映できないというデメリットがあります。
二次判定
コンピューターによる一次判定をした後次は医療福祉の専門家による二次判定があります。
これは、一次判定の結果に囚われすぎず、訪問調査の特記事項や主治医の意見書の記録内容を元に介護における負担などを考えた上での判定となります。
この判定では、一次判定では要介護3と出ましたが、二次判定では要介護4となることもあります。
これは、申請者個人の介護における問題が一次判定の結果よりも重度であると認定されたケースです。
逆に要介護3と一次判定ででたが、二次判定で要介護2になるといったケースもあります。
これは、一次判定の結果より二次判定で個人の抱えている問題が検出されたデータと比較し重くないと判断されたことになります。
当然、結果が納得できないと言われる方や介護をされる家族や担当ケアマネージャーもおられます。
そういった場合には上位の行政機関に再審査を依頼することも可能となっています。
介護認定調査 のコツ
介護認定の判定を正しくしてもらうためには、訪問調査での対応が重要となってきます。
二次判定で主治医の意見書や訪問調査でのお話も介護度に決定の材料となります。
では、正しく介護度を判定していただくコツはあるのでしょうか?
ここでは、介護度を正しく認定してもらうためにも、訪問調査での対応について解説していきたいと思います。
主治医の意見書、訪問調査の対応が重要
介護認定調査の際、まず主治医の意見書と訪問調査の対応は重要な判断材料となります。
実際、一次判定はコンピューターがしてくださいますが、認定調査を受けいてる方を見ているのは主治医や訪問調査でこられた介護認定調査員ですからね。
主治医の意見書には、自宅での生活で困っていること、どういった症状を訴えられているか、今後の予後や家族の負担など、介護の必要性をしっかり記載していただくことをお勧めします。
訪問調査では、とにかく現状や家族が困っていることをしっかり伝えることが重要です。
そのためにも、訪問調査の前にある程度の準備をしておく必要があります。
その準備は、部屋の掃除ではなく、訪問調査の際、訪問調査員が聞かれる質問をあらかじめ把握しておくことです。
訪問調査の質問内容は介護認定調査票というものから質問されます。
この当日聞かれる内容をあらかじめまとめていると質問の受け答えもしやすいですし、現状を伝えやすくなります。
質問の一例で言えば、立位保持や立ち上がりを例に挙げると、咄嗟の質問に対し、できます。と答えてしまうと思いますが、質問内容や回答を把握していれば、「ものにつかまりながらできます。」と正確な内容で答えることが可能です。
何も持たずに立つというのと、何かにつかまりながら立つのはまた介助量や体の能力的にも違いますからね。
なので、あらかじめ質問内容を把握しておき、現状をしっかり伝えられるようにしておきましょう。
ありのままを見せる
よく、高齢者の方で「訪問にこられるわけだから掃除をしておもてなしを…」と認定調査員がこられるから普段しなかった掃除をされる方がおられますが、認定調査においては心苦しいかもしれませんが、ありのままを見せるためにも掃除はしないほうが良いです。
また、できないことは恥ずかしいという認識があるかもしれませんが、できないと答えましょう。
実際できないことに対して「できる」と答えてしまったら、訪問での様子しか見ていない認定調査員はできると判断してしまい、本来よりも軽度の判定を出してしまいます。
ただ、どうしても本人の前で「実はできないんです。」と言ってしまうと少しわだかまりが生じてしまいますよね。
そう言った場合は、認定調査員にこっそり言ってでも伝えましょう。大事なのは正しい現実を認定調査員に知っていただくことです。

介護認定調査での注意点
介護度は認定の結果により、利用できる限度額が変わってきます。ですので、認定調査の際は本人だけではなく家族の負担のことも考え、妥当な判断をしていただきたいです。
ただこの認定調査、訪問調査の質問の答え方などによっては重度であるけれど軽度に見られたりその逆のパターンもあります。
ここでは認定調査における注意点を解説していきます。
必ず家族が同行すること
要介護認定を受けるにあたって家族の立ち合いはかなり重要です。
また同行する家族はキーパーソンではなく、普段よく介護する家族が望ましいです。
何故かというと、普段介護していない家族が認定調査員の質問に答えるとどうしても主で介護している家族との認識に差異が生じるからです。
先程の認定調査のコツでも書きましたが、大事なのはありのままを伝えることです。
もし、認定を受ける方が遠方であったり家族が同行できない場合は現状をケアマネージャーに伝え同行してもらうのも一つの方法です。
要介護者に任せて話を進めるとどうしても現状の日常生活への介助量と本人のできると思っている能力に差が生まれてしまいます。
そうなると適正な審査を受けることができなくなってしまいます。
また、介護の必要性を必要以上に伝えるのもよくありません。主治医の意見書と内容に大きな差異があれば、再審査ということになってしまいます。
適切な審査を受けるためにも必ず家族(主介護者)が同行しましょう。
伝えられることはしっかり伝える
認定調査のコツの部分と被るところもありますが、事前の準備をしっかりして伝えられることは全部伝えておきましょう。
また、訪問調査の際、かしこまって普段よりしっかりしており、回答をきちんとしようとすることが多くあります。
こう言った場合も普段と違うことや普段の動作、言動等を認定調査員に全部伝えましょう。
例え訪問調査の日に日付や年齢が答えられていても普段答えられていなかったら伝えたほうが良いですし、同じことを繰り返す、場所がわからなくなるといった認知症の症状がある場合は必ず伝えましょう。
また、認定調査票の質問内容以外で、普段の生活の中から気になること、困っていることをあらかじめメモしておくこともお勧めです。
どうしても調査の日になると、質問の回答や動作確認が多く、伝えたいことを伝え忘れてしまうことも十分あり得ます。
ですので、日常で困っていることなどはメモしておくことをお勧めします。
また、困っていることは、介助内容だけでなく、車椅子を使用した際玄関が狭いとか、上り框の段差が高いと言った介護をする上での環境に関する内容も伝えておいて良いと思います。
要介護者が困っていること、介護者が困っていること、介護をする上で気になることを余さずに伝えていくことが重要です。
まとめ
介護認定調査は、要介護度を判定する上で大変重要な調査になります。
要介護度によっては利用できる介護保険料の限度額が変わってきます。適切な要介護度を判断してもらうためにも介護認定調査の事前準備として、質問内容の確認と普段困っていることや、要介護者、介護者の不安、困っていることを整理しておき、望むことをお勧めします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。