遺留分とは、法定相続人が本来もらうべき遺産のことです。遺言に特定の人に相続財産を渡すとあったら、相続でもめることがあります。その場合に、法定相続人の権利を守るために遺留分として決められています。
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遺留分の計算とは
遺留分を算定する際は、遺留分の基礎財産を出し、遺留分率や法定相続人率を乗じたものが遺留分です。基礎財産は亡くなった後の遺産だけではなく、生前贈与した一部の額は遺留分の基礎財産に入ります。
遺留分とは
遺留分とは、法定相続人が最低限もらうことができることを民法で保障されている財産です。この遺留分には、たとえ遺言に「すべて長男に渡す」などと書かれていても受け取ることができます。遺産をたくさんもらっている人に、もらうべき分を遺留分減殺請求として返還を請求することができます。
遺留分は、法定相続人に生前に渡すこともできます。相続開始前1年間の間にもらった財産があるなら、それを遺留分から引かなくてはなりません。また、特別受益の贈与も遺留分に関係なく差し引きます。遺留分を相続する権利がある法定相続人とは、配偶者、子供などの直系卑俗、父母などの直系尊属が遺留分相続人で、兄弟姉妹は遺留分相続人に含まれません。
遺留分の計算をする際の基礎財産は、被相続人が相続開始日にあった財産に加えて、相続開始前の1年間になされた贈与や遺留分権利者に損害を加えることを知っていながら行われた贈与、特別受益に該当する贈与が含まれます。
遺留分権利者に損害を加えることを知っていながら行われた遺留分の算定は、民法1030条により次のように規定されています。
「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする」
遺留分の計算式
相続財産の計算式は、まず基礎相続財産の計算をします。基礎財産には、現金、預貯金、株式、不動産などのすべての財産をさします。次に特別受益者がいない場合は相続人の遺留分を計算します。遺留分は、次の計算式で求められます。
遺留分=基礎相続財産(相続財産+贈与した財産―相続債務)×遺留分率×法定相続分
遺留分率とは
遺留分率とは、遺留分の受け取る権利がある人に保障されている割合のことです。遺留分率には、総体的遺留分率と個別的遺留分率があります。遺留分権利者の遺留分率は総体的遺留分に個別的遺留分を掛け合わせた割合です。
総体的遺留分率
総体的遺留分は、民法1028条にある遺留分権利者の割合です。
遺留分の権利者が直系尊属(被相続人の親)である場合は1/3
それ以外の配偶者や直系卑属は1/2
個別的遺留分率
個別的遺留分率は、総体的遺留分を複数の遺留分権利者間で分配することです。個別的遺留分率は民法1044条、900条、901条の規定にそって計算されます。
例をとって考えましょう。①「法定相続人が相続人の妻と相続人の3人の子供(直系卑属)だとした場合」と②「法定相続人が妻と親2人(直系尊属)、兄弟2人だとした場合」の2通りを考えます。総体的遺留分率は相続財産の1/2なので、配偶者と子の法定相続分率をかけた割合です。
配偶者
①の場合 配偶者の個別的遺留分率は1/2×1/2=1/4
②の場合 配偶者の個別的遺留分率は1/2×2/3=1/3
子供
①の場合 子供の配偶者遺留分率は1/2×1/6=1/12
親
②の場合 親の配偶者遺留分率は1/2×1/6=1/12
兄弟
②の場合 兄弟には遺留分はありません。
遺留分の計算例、シート
遺留分の例をあげてみてみましょう。配偶者と子供2人が遺留分相続者とします。相続財産が2,000万円、生前贈与として妻に200万円渡しました。遺言で財産をすべて子供に譲ると書いてあったとします。すると、総体的遺留分は(2,000万円+200万円)×1/2で1,100万円です。
妻の個別的遺留分は、(2,000万円+200万円)×1/2×1/2=550万円ですが、生前に200万円を受け取っているので、実際に与えられる遺留分は550万円ー200万円=320万円です。子供の個別的遺留分は、(2,000万円+200万円)×1/2×1/4=275万円です。遺留分は、妻が320万円、子供がそれぞれ275万円です。
不動産
不動産は行政が評価額を算出していて、固定資産税評価額、路線価、地価公示価格、地価調査標準価格がありますが、遺留分算出の場合は、時価による評価がされす。路線価や固定資産評価額だと安くなるためです。
債務
債務とは借金のことで、家のローンやカードローンなど、負の財産です。負の遺産は基礎財産を求めるときに、相続債務としてマイナスして考えます。
特別受益
特別受益は「被相続人の生前の資産および生活状況に照らし合わせてそれが扶養の一部であると認められる場合は(特別受益に)該当しない」とあるので、年収がかなり多い人や資産がある人が特別受益として認められます。
特別受益とみなされる対象となるものは、不動産の贈与、遺贈、婚姻や養子縁組のための贈与、生計の資本として受けた贈与があります。遺贈とは遺言により遺産を無償で相続人に譲渡することです。婚姻での支度金や特別支度金は特別受益とみなされています。
ただし、金額が少額で被相続人の資産とてらし扶養の一部となる場合のみ特別受益とは認められません。結納金や挙式、披露宴の費用は、特別受益ではありません。被相続人の生前の資産収入、高等学校教育のための渡した学資は特別受益とみなされます。
遺留分概算シート
遺留分額の計算はややこしいので、弁護士事務所等のホームぺージを見ると、「遺留分計算シート」があります。シートに記入するとわかりやすく計算しやすくなります。
●東京弁護士会の遺留分計算シート(訴訟用)
基礎となる財産一覧表と遺留分減殺計算表を書くようになっているシートです。
遺留分の計算の問題
遺留分には、注意しなくてはならないことが、遺留分減殺請求の時効です。時効を過ぎると遺留分を請求できません。また、家庭裁判所に提出するには、財産の証拠を確保する必要があります。また、自分の遺留分はいらないと思う人は遺留分を放棄することもできます。
遺留分の時効
遺留分の請求は期限があり、相続開始を知った日の翌日及び減殺すべき贈与や遺贈を知った日から1年以内に遺留分を侵害した相続人に請求しないとその後の請求はできません。また、相続開始から10年間で除斥期間が時効を迎えます。請求はまとめて全員ができず、個別に行わなくてはなりません。
遺留分を請求する相手は、遺留分を侵害している相続人やそれ以外の遺言にあった人、請求の際は遺留分侵害額を明記し、内容証明郵便で行います。内容証明郵便だと、郵便局がその内容をあとから証明してもらえます。
遺留分の放棄
遺留分の相続を放棄したい場合は、生前の場合はその旨を家庭裁判所に許可を申請します。もし、遺留分放棄の申請をしたとしても、他の相続人の遺留分には変わりはありません。遺留分放棄をした人の分は遺言で相続を受けた人がそれを受け取ります。
被相続人が亡くなった後に遺留分の放棄をしたい場合は手続きの必要がありません。相続開始から1年間、遺留分の請求を家庭裁判所に提出しなければ、消滅時効により遺留分減殺請求をする権利が消滅します。
まとめ
相続には遺留分があり、各法定相続人の受け取るべき権利である遺留分の相続財産があります。遺留分の相続は、相続が開始してから1年以内に遺留分を侵害した相続人へ減殺請求をしなくてはなりません。そのあとで、遺留分を計算して請求します。不動産を相続する場合は、不動産の評価額はややこしいので、専門家にお願いする方が良いでしょう。
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