せん妄のガイドラインについて教えて!例は?

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夜勤の巡回時など、介護の現場において度々接する事になる、せん妄症状。また、この症状は同じでも、原因は様々なものがあります。対処を誤ると、重篤な結果を招いてしまう事も有り得るのです。
そのため、何を以て「これはせん妄である」とするかの定義と対処法を定めた、ガイドラインが設けられています。その内容を解説します。

 

せん妄のガイドラインとは

ガイドラインはどう用いられるか

不安感や薬剤は人間の精神に大きな影響を与えます。
例えば、幻覚を見たり、大声を張り上げたり、身体の痛みを訴えたり。精神の影響は様々な形で現れます。
しかし、その言動だけで精神的な物なのかは判断出来ません。例えば、「足が痛い」との訴えは、実際に脚の器官に移乗が起きているのかも知れません。
せん妄のガイドラインは、過去の事例から、せん妄独特の症状を集めて分析した物です。それに定められた項目に当てはめる事で、せん妄なのか、別の物なのかを診断する、指標の一つにします。

 

ガイドラインの例

ガイドライン自体は大学や研究所などで独自に作られていますが、それらの根幹となる、世界的な物もあります。
以下に日本でもよく用いられている、せん妄を診断するガイドラインとして用いられている定義を挙げます。

“ICD-10 DCR”(国際疾病分類 研究用診断基準)

“International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems”の略。日本語訳も正式には「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」となります。
WHO(国際保健機関)にて、診断基準の国際規格として生み出されました。
現在用いられている物は、1990年に作られた第10版をベースに改定を重ねた物であるため、「10」のナンバリングがあります

これは病因や死因を研究し統計化するで研究を繰り返し、診断基準を作っています。

“CAM”

“Confusion Assessment Method”の略。
スクリーニングツール。対象の症状をテストする方法。
いくつかの項目に分かれ、それが当てはまるかどうかで、診断のヒントとする。本来は9項目ですが、現在は4項目に簡略化。(1)(2)の双方と、(3)(4)のどちらか3項目の該当で、せん妄と判断されます。
1)急に発症したか? その後、症状が変わっていくか?
2)注意が散漫か?
3)思考が支離滅裂か?
4)意識レベルの低位はあるか?

“MMSE”

“Mini Mental State Examination”の略
スケーリングツール。患者へ問いかけるための11項目で構成。全項目の合計が30点となっており、23点以下でせん妄の疑いありとしています。

 

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せん妄 ガイドラインの最新版

2017年時点での最新版は前述のDSM-5、2013年作成です。WHOも新版のICD-11を作成中ですが、完成は2018年になります。

“DSM-5”(アメリカ精神医学会精神障害の診断と統計の手引き)

“Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders”の略。「-5」は2013年作成の最新版である「第5版」の意味です。
アメリカ精神医学会により作成された精神疾患分類。自らの定義した精神障碍の分類を「共通言語」と呼び、世界的な統一基準を目指して作られたものです。

DSM-5による定義

DSM-5での、「何を以てせん妄と診断するか」の基準を要約すると以下の様になります。
●意識及び認知機能の障害
・急性での変動あり
・身体の疾患・中毒によって引き起こされる

何を以て判断するか?

1)注意・意識の障害
・むら気になり、その意識が一つの事に向いても長続きしない
・周囲への見当識障害あり
2)短期間での発症
・数日から数時間で大きく変化
・発祥したらその日のうちに重症化
3)認知機能に障害あり
・知覚、失見当識、言語、記憶 視空間の認知など
4)上記の症状が特定の物質の中毒または病気によると証明し得ること
5)上記(1)及び(3)が他の神経認知障害によるものでないと証明し得ること

その他の判断基準

DSM-5は更に判断材料として、以下を求めています。

1)急性であるか? 持続性であるか?

2)過活動型か? 低活動型か? その中間の混合型か?
低活動型は認知症と判断されるケースが多くあります。
しかし、せん妄は認知症では無く身体疾患により引き起こされる事もあるため、判断を誤ると危険な事になりかねません。

 

 

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せん妄のガイドラインの薬剤は?

せん妄に対する薬物も定義されていますが、問題が多々あります。

保険適応内の薬剤

チアプリド(別名:グラマリール)

抗精神薬。日本では唯一の保険適応される、せん妄治療薬となっています。
しかし、一応は「せん妄の改善」が認められてはいるものの、承認されている効能効果は、「脳梗塞の後遺症に起因したもの」と限定されています。

保険適応外の薬剤

平成23年9月、厚労省からの保険局医療課長通知により定義。せん妄と判断され尚且つ保険病名が付けば、使用が認められています。
これらの抗精神薬は、興奮状態や昼夜逆転生活送るリズム障害など、せん妄の症状それ自体に作用します。
また使用後は、注意集中力や認知機能が回復したか、観察が必要です。
使用後に、振戦、固縮、高熱、意識障害などの副作用が起きる可能性があります。

リスぺリドン

非定理型抗精神病薬。統合失調症を対象とした物。
経口の他、静脈注射も可能

ハロペリドール

抗精神病。静脈注射。振戦、固縮のおそれあり。

クエチアビン

抗精神病。内服。

ペロスピロン

非定型抗精神病薬。統合失調症対象。経口。

使用例あるが効果不明とされる薬剤

抗鬱剤

ミアンセリン、トラゾドン

漢方薬

抑肝散、釣藤散、黄連解毒湯

 

注意点

せん妄とは何かを定めたガイドラインは大学や研究所で作られていますが、内容にずれもあり、また規格が異なる面もあります。
前述のICD-10は「ICDコード」なる記号で病気を分類し、分類名や個別名を設定します。
ところがこの過程で、日本国内で使われている名前との食い違いが起き得るのです。
例えば、日本ではひとつの名前で呼ばれる病気が、ICDの定義では3つに分類されている物があります。逆に、日本の定義では別々に扱われているものが、ICDでは同一のものとして扱われていたりもします。

同じく前述のDSMは、精神医学の世界基準を想定しており、しかもガイドラインとして最も新しい物ですが、病気の分類が、ICDと異なっています。
日本の官公庁ではICDコードを採用していますが、DSMも世界的に広まったガイドラインです。日本でも各地で活用されています。

そもそも日本での研究自体が、ICDやDSMだけを使って行われているわけではありません。日本独自の研究による物など、様々な企画で作られていたものが混じって来ます。
結果、研究に関する情報交換や意志疎通、ひいては、せん妄への対処に支障が出る恐れがあります。
特に薬剤の扱いに関してすら、ガイドラインが統一されていません。国際基準の様に扱われているガイドラインも、決して万能ではないのが実状なのです。

 

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まとめ

せん妄は、そもそもひとつの病気では無く症状に過ぎません。原因は様々な物があり、対処を誤ると重篤な結果を招く物もあります。しかし、対処法は一定せず、各所で考え出された物にもズレが出ているのが実状です。せん妄に限った話では無く、病気という人類共通の問題に対処出来る様に、世界が一丸になる日が来ることを祈りたいものです。

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