臨床心理士って国家資格?経緯は?公認心理士との違いは?

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臨床心理士は、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。日本には心の問題に取り組む職種として、カウンセラーやセラピスト、心理相談員などがあります。しかし、それらには明確な資格があるわけではありません。一方、「臨床心理士」は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格すると認定される資格です。近年、スクールカウンセラーが全国公立中学校や小学校に臨床心理士の資格所有者が配置されることも多くなりました。スクールカウンセラーとして働くための要件の一つに臨床心理士の資格を要していることは明記されているほど現代社会においては認められている資格といえます。

社会的にも知名度があり、将来的にも活躍が期待されている臨床心理士の今後についてご紹介したいと思います。

 

臨床心理士はこれから国家資格になる

多様化している現代において、心の問題を抱える人は増えています。それに伴って、それらの問題を解決する為に臨床心理士をはじめとした心理の専門職のニーズは増えていくと考えられます。現在、心理系の民間資格は20程度ありますが、その中でもより専門性と信頼性が評価されているのは臨床心理士です。
では、臨床心理士は今後国家資格になる可能性はあるのでしょうか。
現在臨床心理士は24,980人存在し、医療機関や精神神経・心療内科、福祉施設や学校の心理相談、企業のメンタルヘルス担当、家庭裁判所の調査官など、様々な領域に幅広く存在します。
しかし、その多くが非常勤であり雇用状況は安定しているとは言えません。そこで、臨床心理士が国家資格になれば、雇用の安定につながるとして、日本臨床心理士協会等、関連団体が国家資格の成立を国に求めてきました。
そのような背景の下で、日本の臨床心理分野において、初めて国家資格が作られることが決定しました。しかし、それは臨床心理士の資格そのものが国家資格になるというものではなく、新たに「公認心理師」という資格ができることになったのです。

臨床心理士と公認心理師。簡単にこの2つの資格の違いを整理すると、「臨床心理士は民間資格」で、「公認心理師は国家資格」であるということの他に以下の違いが挙げられます。

■ 公認心理師と臨床心理士の仕事内容の違い

臨床心理士の仕事内容

1.心理査定や、面接での査定(アセスメント)
2.臨床心理学的な面接による援助(カウンセリング)
3.地域のこころの健康を守るための地域援助
4.査定や面接などを含めた心理臨床実践に関する研究や調査

公認心理師の仕事内容

1.心理査定や、面接での査定(アセスメント)
2.臨床心理学的な面接による援助(カウンセリング)
3.関係者への面接
4.心の健康に関する教育・情報提供活動

一見すると、3.4に違いがありますが、公認心理師の仕事にある「関係者への面接」も心理面接に含まれることから、実質的にはほとんど仕事内容は同じと考えられます。
唯一大きく異なるところとしては、臨床心理士の仕事の一領域としてあった、「研究」が公認心理師の仕事には含まれていないところです。ですが、心理(こころ)という曖昧な対象を扱うため、研究はこれからも必要となっていくということでしょう。

 

 

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国家資格になる経緯

日本の臨床心理分野において、初めて国家資格が作られることになり、決定したのが「公認心理師」という資格です。
公認心理師は「公認心理師法」に基づく国家資格です。
公認心理師法は、平成27年9月9日に議員立法により成立し、9月16日に公布され、平成29年9月15日に施行されました。第1回公認心理師試験は、平成30年中に実施する予定です。
公認心理師という国家資格の誕生までの経緯は先に触れたように心理分野における専門資格を明確にし、雇用の安定を図るという目的を含んでいます。
業務内容としては、これまで民間資格である臨床心理士や心理カウンセラーが行ってきた業務全体をカバーするものとなっており、医療や福祉、教育、産業など、さまざまな領域で活躍が見込まれます。
公認心理師の誕生によって、臨床心理士との役割や立ち位置の違いはさまざまなところで議論されていますが、臨床心理士という資格そのものは、今後も民間資格として残っていくことが決まっています。

 

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国家資格になると何が変わるの?

臨床心理士という資格自体が国家資格にはならないのですが、心理専門資格として公認心理師という国家資格ができました。国家資格である公認心理師の業務は現時点ではほとんど変わりないと言われています。
臨床心理士と公認心理師の違いとして給与が上がる場合や、手当てがもらえたりする場合などが考えられますが、働く環境が整わない限り実質的な違いはないのではないかと考えられます。そのため、実際には国家資格による大幅な収入の増加は難しいのではないかと予想します。
また、元々臨床心理士等の業務を基準に、公認心理師の業務内容が作られているので、業務範囲や活動の場に大きな違いはないといえるでしょう。
要は公認心理師の資格を取らなくても、臨床心理士資格のみで仕事をしていける場が今のところ多いのです。
現在、既に心理職に勤めている人や、臨床心理士を目指していた人の中には、新たに公認心理師資格をとるべきか悩んでいる人も多いと思います。仕事内容には大きな違いはなく、どちらの資格を持っていても活躍できる場はもちろん幅広くあります。
今後、公認心理師国家試験が何年か行われたのちに徐々に保持している資格が臨床心理士なのか公認心理師なのかによって働く場が異なってくるかもしれません。
公認心理師が施行されてからは、
①公認心理師資格のみを持つ人
②臨床心理士資格のみを持つ人
③公認心理師資格と臨床心理士資格の両方を持つ人
④いずれも持たない人の4つに分類されていくと考えられ

それに応じて働く場も分類されていくことでしょう。

 

臨床心理士のこれから

臨床心理士という民間資格が、公認心理師という国家資格ができたことでこれから衰退していく職種なのかということは誰もが気になるところでしょう。
近年のメンタルヘルスケアへの関心の高まりや、精神科の患者数が年々増えていることを考えるとその需要はこれからもあると考えます。しかし、公認心理師が社会的に認められていくであろう中で臨床心理士の将来性を考えると不安を感じてしまいますね。
そこで、まずは公認心理師と臨床心理士の違いを一つ挙げてみます。
臨床心理士は、医師や教員といった他の専門職から影響を受けない独立した職種であるということが挙げられます。公認心理師と異なり医師の指示のもとに心理療法をおこなうという「義務」がないのです。公認心理士の場合は、医師の指示のもと心理療法を行いますので心理療法の内容など密に交換しながら治療に当たることになります。このことから臨床心理士は独立した動きが可能だと言えるでしょう。

例えば、会社などに相談室を設ける場合、公認心理師を依頼するにはクライアントに主治医がいる場合の扱いが非常に複雑になってくることが予想できます。臨床心理士であれば縛りがないので頼みやすいですね。

このような一例から、今後臨床心理士は公認心理師と住み分けしていく存在を継続していくことができるのではないかと考えます。

 

 

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まとめ

心理に関する学びの場が増え、心理職のニーズが高まっている日本においては心理専門職の将来性は高いと思われます。しかし、公認心理師や臨床心理士は受験資格を得るためのハードルが高いのでますます民間の色々な資格が増えるかもしれません。
自分が心理について知識として学びたいのか、職業として活かしていくのかによって取得を目指す資格も異なってくるでしょう。公認心理師と臨床心理士を比較してもそれぞれに強みがあります。

国家資格ではなくとも臨床心理士が培ってきたこれまでの専門性や築いてきた社会的立場はこれからも保持できるでしょう。

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