ADLを知ってると介護に役立つ?項目は?実例は?

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介護や医療の現場でADLという言葉が一般的に使われるようになってきています。ADLが高いとか低いとか、上がったとか下がったとかいう表現を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。ADLとはその人の状態を評価するだけのものなのでしょうか?実際にどんな風に役立てたら良いのでしょうか?
今回はそんなADLについてご紹介したいと思います。

 

ADLとは

ADLってどんな意味?

ADLは英語で(Activities of Daily Living)の頭文字をとったもので、
A = activities 動き、動作
D = daily   日々、毎日
L = living   生活
日本語に訳して「日常生活動作」と言われるものです。

ADLの目的は?

病気や怪我、高齢者など日常生活に助けが必要な人の「生活の質(QOL)を高める」ということが主な目的になります。
ADLが高いということはそれだけ自立した生活ができるということになり、逆に低いということは人の助けを必要とし生活の制限が多いとも言えます。

ADLってどんなもの?

普段の生活の中で日常的に行っている動作を区切ったものがADLです。人が自立した最低限自立した生活をするのに必要な動作とも言えます。

具体的には?

「移動」「移乗」「整容」「食事」「排泄」「入浴」などがあります。動きだけではなく「社会交流」というのもあります。社会で生きている上で人と会ったり話したりする機会が必ずあります。聴く、話す、考える、対応するというように人との関わりもADLとして考えられています。

どんなときに使うの?

元々はリハビリテーションの分野から始まった考え方で、日常的に障害などを抱える人がどのくらいのことが自分で出来ているのか、リハビリによってどのくらい変化が起きたのかということを知るためのものでした。この考え方は日常生活を支える介護の分野でも共通するところが多く、介護サービス事業者が利用者の状態や、老化・病状・認知症の進行具合などを把握する手段にも用いられるようになりました。

ADLの高い低いはどうやって決めるの?

「できる・できない」の判断というのは簡単そうでとても難しいことです。環境や道具、気分によって結果は大きく変わります。また見る人の評価によっても変わります。そのためいろいろな試行錯誤がされています。
評価方法は事業所や自治体で独自の基準を作っていたりしますが最近ではFIMという評価法を使用するケースも増えてきています。
対象者が誰であっても、評価する人が誰であっても、なるべく差が出ないように考え、その使用者や事業形態によってわかりやすい基準を作って評価しています。

 

 

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ADLの項目

項目に分ける利点

項目に分けることでどんな動作が出来るのか、どんな機能が弱くなっているのかということがわかりやすくなります。

運動項目と認知項目

ADLの項目を大きく分けると体を動かす「運動項目」と見る、聞く、話す、考えるなどの「認知項目」に分けることができます。

運動項目

具体的には「起居動作」「移動」「移乗」「整容」「清拭・入浴」「排泄」などがあります。
運動項目の中でもさらに「基本動作」と「セルフケア」という項目に分けることができます。

基本動作

「起居動作」「移動」「移乗」などほかの運動項目にも関係する基本的な項目として分けられます。例えば歯磨きをするときは座っていられるか、入浴の時の歩行や座り替えなどができるかどうかということにも関係してきます。

セルフケア

「整容」「清拭・入浴」「排泄」など自分の清潔保持や身だしなみに関する項目として分けられます。基本動作より複雑な動きも多く認知項目とも関係があります。

認知項目

具体的には「理解」「表出」「記憶」「社会的交流」「問題解決」などがあります。
認知項目の中でも更に「コミュニケーション」と「社会認識」という項目に分けることができます。

コミュニケーション

「理解」「表出」「記憶」がこれにあたります。社会の中でも小さな単位で個人と個人の関わりとして基本的な項目として分けられます。意味が分かる、言語で伝えられる、覚えていられるというコミュニケーションに必要な最低限の機能とも言えます。

社会認識

「社会的認識」「問題解決」がこれにああ足ります。機能的な部分というより、人に配慮したり問題が起きたとき自分で考えて解決できるかという人との関わり方の項目になります。

 

ADLの事例

起居動作

立ったり座ったり、寝たり起きたり、寝ている時に寝返りがうてるかなど自分で姿勢を替える動作の項目です。何かに掴まれば出来るという場合もあります。

移動

自分で歩けるといっても杖や歩行器を使えば歩けるなどいろいろな歩き方があります。歩けなくても車椅子なら移動できる場合も自分で移動できるという考え方ができます。

階段

一般的な家庭の階段を想定して15段程度の昇降が可能かどうかということが評価されます。

整容

洗顔、整髪・手洗い・歯磨きを言います。化粧やひげそりはできなくても生活できないわけではないので状況によってはADLの評価としては含まれないことがあります。

更衣

衣服の着脱では上を着るのと下を着るのとで分けられることがあります。上は座ったままできますが腕を通したりボタンをするなどやや複雑な動作が入ったりします。下は立ったり腰を上げたりしないとできないことがあります。そのため障害の部位や度合いによってどちらかができないという場合があります。

食事

食事は、口に運ぶ、咀嚼、嚥下のことを言います。お箸など適切な道具を使用して食べることが出来るかを評価する場合もあります。

排泄・トイレ

トイレ内でのズボンの上げ下げ、終わったあとに拭けるのかという評価をします。
トイレまでの移動はこの項目には含まれません。尿器やおむつを使用している場合はベッド上での動作を評価します。

排泄・コントロール

排尿・排便に関して、適切な場所、適切なタイミングで行えるかどうかを評価します。

入浴

「体を洗えるか」「浴槽を使えるか」という評価が重点で、浴室の入口からシャワーチェアー、浴槽まで等の移動は入浴のADLとしては含まれません。体のどの部分を洗えるのか、浴槽の出入りができるのかという評価になります。

言語の理解

相手の言っている内容が理解できているか、指示が伝わっているかなどを評価します。例えばトイレを促したときに無言だったり、めちゃくちゃな反応であったとしてもきちんとトイレに行ける場合は理解できていると評価できます。

言語の表出

言っていることが相手に伝わるかどうかという評価をします。会話がめちゃくちゃでもかまいません。例えば「今日のご飯はなんだろうね」と言われたのに対して「今日は仕事に行きました」というような返答でも出来ていると評価できます。

社会交流

人への配慮が出来るかどうかという評価をします。人に迷惑をかける行為や自分がどう思われているのかということです。認知症や疾患が関係しない元からの性格であっても評価の対象になります。

問題解決

日常生活で起きる問題に対して自分で解決できるかどうかという評価をします。テストやクイズのような問題ではなく、「お腹がすいたらどうしようか」というような問題の解決です。

記憶

日常生活上必要な記憶の評価をします。円周率を何十桁も覚えるような記憶ではなく、人の名前や特徴、頼まれごとや物の場所などの記憶です。

 

 

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ADLのポイント

支援の手がかりになる

ずっとその人の介護をしてきた人であれば、どこを介助すれば良いのかよく知っていると思います。しかし施設など全く知らない人が介護をすることになったとき、ADLは重要な手がかりになります。
認知症があり立ち上がりはできるけれど歩行は不安定な場合転倒のリスクがある。
歩行が不安定でも体を洗うことができるなら浴室内で移動を介助すれば良さそう。
重度の認知症でも言語の理解ができていればトイレへ誘導できるかもしれない。
このように「リスク」「介助の方法」「改善方法」の予想や目安にすることができます。

介助量の目安

ADLの全体を見ることでおおよその介助量を知ることができます。できないことが多ければそれだけ介助の量は増えますので労力や人手が必要になります。
家で介護をしている場合、家庭の中は見えにくい部分もありケアマネージャーや外部から介護の支援を行う人が家族にどれくらいの負担がかかっているのかという目安にすることもできます。
施設やサービス事業所で介護を受け入れる際には受け入れ可能かどうかや部屋割りの参考にもできます。施設やサービス事業所では使える人手は限られています。介助量の多い人ばかりを集めてしまうと介助が行き届かなくなってしまいます。

病状の把握

ADLを定期的に評価することで自立度の向上や病状の進行などを知ることができます。
できることが増えれば本人や家族にとっても喜ばしいことですし、介護現場のやりがいにもつながります。
逆にできることが減ってくるということは病気の発生を知るきっかけになったり、ALSやパーキンソン病のように体が段々と動かなくなっていく病気や認知症などがどの程度の速さで進行しているのかを知ることもできます。

ADLの改善

ADLを評価した後はその動作の「どの部分が出来ないのか」「なぜできないのか」を知ることでADL改善につなげることができます。
歯磨きができない ⇒ 腕が上がらない ⇒ 腕をあげる訓練・工夫
立てるのにトイレに行けない ⇒ トイレにつかまるところがない ⇒ 手すりを設置
食事ができない ⇒ 箸が使えない ⇒ スプーンや使いやすいものに変更
このように、できないことを知りその理由を考えて方法を変えたりちょっとした介助をすることで改善できることがたくさんあります。

 

ADLの注意点

「出来ること」と「していること」の違い

ADLを評価するときに一番困るのが出来ているのと判断してよいのかわからない状態のときです。昨日は出来ていたけれど今日は出来ない、たまに出来る、などです。そんなときは「出来ること」と「していること」は違うということを覚えておいてください。
「出来ること」は物理的に動作が可能か、「していること」は習慣として行えるかどうかです。どちらの意味として捉えるのかは活用する目的によって変わると思いますが、ADL評価では「していること」とする場合が多いです。

評価の統一

ADL評価をする上で同じ人が全て評価するのであればそれほど違いは出ないかもしれませんが、複数の人が評価すると基準にバラつきが生まれます。評価の基準は出来るだけ人によって違いが少なくなるように方法や基準を統一すると良いです。

できない動作について原因を明らかにする

出来るか出来ないかという判断はとても難しいところがあります。それは人によってさまざまな原因があるからです。体が動かない機能的な問題や環境、やる気になれない精神状態などがあります。
例えばA職員の時はできるのにB職員の時はできない。補助する部分が違うのかもしれませんし、やりにくい環境に気づいていないだけかもしれません。もしかしたらA職員はその人をやる気にさせる魔法の言葉を使っていたり、雰囲気作りをしているのかもしれません。
その原因を知り、共有することで「できる」から「している」へと、継続できるADLに変えられることもあります。

生活の質の向上

「ADLの改善は生活の質(QOL)の向上」という難しい言葉だけで考えてしまうと「ADLを改善することが生活の質の向上」と勘違いしてしまいがちです。
ADLは日常の動作で「出来る」「出来ない」を評価して効率の良いリハビリや支援を行うことが目的ではありません。自分で出来ることによって生活の質を上げることが目的です。
介護の現場でよく間違いやすいのが強引なADL訓練です。助けを求められてもやらせる、ほうっておく、無視する。時にはそういうことも必要な場合がありますが、その先にあるものが大切です。自分でできるようになっても「誰も助けてくれない。自分は一人だ」「早く死にたい」と思うようであればADLを向上する意味がありません。
「生活の質」とはなんなのか、それを忘れないようにしましょう。

 

 

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まとめ

ADLは評価して状態を把握することが目的ではありません。ADLを知ることでその人がその人らしく生きるためのヒントが詰まったものです。ADLを有効に活用して、その人が笑顔になるような支援につなげられると、介護をする方もやりがいを感じて元気になれるのではないでしょうか。

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