移乗動作はどうしたらいいの!?

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ご自宅で介護されておられる方で要介護者を車椅子等に移動させる時どのように介助されていますか?介護ヘルパー等のサービス中は専門家に任されますが、夜や朝方などに移動しなければいけない時に、特に相手が男性の場合、自分自身が腰痛等になり大変な作業と聞きます。つまりそれが「移乗動作」です、これから正しい基本動作や実例を交えながら紹介させて頂きます。

移乗動作とは

日常生活の中で要介護者が寝たきりの状態ではなく、下半身や片側の麻痺等で自力でトイレや入浴等へ移動ができない状態の要介護者がベッドと車椅子の間、車椅子と便器間などの乗り移りする動作のことで、移動前と移動後で接している平面が変わる時の事を言います。要介護者自ら「移動」という行動ができない状態には脳梗塞、脊椎損傷、脛椎関連による麻痺など様々な状態で移乗動作が自ら困難な要介護者は多数おられます。

移乗動作の必要性が高い対象者

そんな移乗動作困難な要介護者の中でも現在「脳卒中患者」への自立度が着目されています。ある研究機関の報告によると、脳卒中患者は、運動機能障害や高次脳機能障害などの後遺症により、ADL自立度が低下することが多く脳卒中患者にとって、「ベッドと車椅子間の移乗」を早期に獲得することはADLの自立度を高めるために重要な事です。理学療法分野においても移乗動作の介助量軽減を目標とした介入を展開する必要があると考えられています。そこで、現在、脳卒中患者を対象に機能障害および移乗動作を構成する各要素的動作に着目し、これらのどのような因子が移乗動作にどの程度影響しているかについて分析されました。
分析方法は、病院および老人保健施設にてリハビリテーションを受けている脳卒中者で58名(平均年齢72.7歳±8.7歳)で。移乗動作能力は、車椅子とプラットフォームベッド間の遂行能力により自立、介助に分けられました。
測定項目は、機能障害要因として麻痺側運動機能、筋緊張、感覚、関節可動域、疼痛、体幹機能、半側空間失認、言語機能(SIAS)、認知機能(MMSE)、非麻痺側筋力(握力、膝伸展筋力)。移乗動作の要因として起き上がり、座位保持、立ち上がり(MAS)、立位保持、立位方向転換(FMS)が設定されました。これらの評価結果をもとに、対象者を移乗動作能力により自立群、介助群の2群に分類し、各測定項目について分析を行った結果。運動麻痺や認知障害が重度であっても体幹の動的機能がある程度残存していれば移乗動作が自力で遂行できる可能性が高い事が判明しました。移乗動作要因では、「立ち上がり」、「立位方向転換」、「起き上がり」が最終選択され、判別率は91.4%でした
また最終選択された項目のうち、標準正準判別関数係数が高かったのは「立ち上がり」、「立位方向転換」でした。このことから、移乗動作能力の改善には、姿勢保持の影響は少なく、そのべっとから起き上がり、車椅子への移動までの一連の動作が重要であると考えられた。

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移乗動作の基本

移乗動作の基本的な動作は①立位移乗 ②在位移乗で要介護者がベットから車椅子に移動する際の行動動作を指します。
■立位移乗
立ち上がりの動作のポイントは、足を手前に引き、身体を前に倒して重心を前に持っていくことで立ち上がりやすくなります。
■座位移乗
ベッドの端に座った状態から、車いすなどに移乗する方法です。
[移乗方法]
①ベッドの座面は、車いすの座面よりやや高めになるようにします。また、車いすの配置はベッドと平行よりもやや斜めにしてベッドとのすき間を少なく、移乗距離を短くするようにします。車いすは肘掛けのとれるものがよいでしょう。

臀部を座面から離さないで移乗するときは、臀部を滑らせて移乗します。 ※1.スライディングボードを使用するとより移乗しやすくなります。

※1.車いすからベッドや車などへの移乗に使います。木やプラスチックなどでできており、表面は滑りやすく、裏面
は滑り止めの加工がされています。介護保険の福祉用具貸与の対象用具です。

②スライディングボードを臀部の下に挟み、車いすに渡します。上体を横に傾けると同時に少し前方に倒すようにすると挟みやすくなります。
③スライディングボードの上で臀部を滑らせます。
④手前に滑って落ちないように奥に臀部を押しつけるように滑らせます。
⑤スライディングボードを引き抜きます。
⑥移動完了
臀部を浮かせて移乗するときは、足で体重を支え、移動バーなどを使いながら臀部を少しずつ動かしていきます。

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移乗動作の事例

介護保険施設における介護事故の発生状況に関する分析調査によると介護現場での事故の過半数を占める事例が「転倒・転落」です。転倒・転落事故が起きやすいシチュエーションのひとつに「移乗介助」があります。「移乗介助が難しい…失敗してしまった…」「移乗介助でどんな事故が起きているんだろう」と思われている方も多いのではないでしょうか。移乗介助で起きた事故、事故が起きたときの対応、事故の予防法、事故が起きた後の報告方法についてご紹介致します。

移乗動作(介助)の事故と対応策の例

1. 事故種別:転落
【状況】おやつ介助のためベッドより車椅子へ移乗介助を行う。移乗後に車椅子を十分にチルトせずにその場を離れてしまい車椅子より転落してしまった。左眉と右頭頂部に裂傷を負われる。
【対応】医務室へ連絡、バイタル測定及び患部の処置を行なう。気分不快や頭痛等の症状は見られない。経過観察を行なう。ご本人様・ご家族様へ状況説明及び謝罪を行なう。

2. 事故種別:受傷
【状況】朝食のため車椅子移乗介助を行った後、左足薬指の爪が剥がれかかっているのを発見する。移乗介助時に寝具等に引っかかったと思われる。
【対応】医務室へ連絡し処置を行う。移乗介助時には足先が引っかからないように注意するよう周知する。

3. 事故種別:表皮剥離
【状況】入浴後、ベッドへ移乗介助を行ったところ、主より痛いとの訴えが聞かれた。右腕に表皮剥離を発見した。
【対応】医務室へ連絡し処置を行う。高齢者の身体的特徴をふまえた上で、介助の際はお客様に身体的負担をかけないよう介助する旨周知する。
利用者の状態は毎日変化を伴いますので、移乗動作に入る前には必ず、日々の変化の状態を心配りしていくことが重要な事です。

利用者の状態に合わせた移乗動作(介助)

介護の難しいところは、利用者ひとりひとりに合った介護をする必要があることです。病気や症状、性格はひとりひとり違います。立位や座位が保てない人や「ここを触れられたらいやだ」という人もいるかもしれません。同じ利用者でも※2.ADLは変わっていきます。その為に移乗動作においてもひとり、ひとり介助のポイントが違う場合がありますので、利用者の状態把握は十分に行って移乗介助を行わないと事故へと繋がっていきます。基本だけでなく利用者をよく理解し、観察して、日ごろからその人に合った移乗介助方法を考えていくことが大切だと思います。

※2.介護におけるADL(Activity of daily life)とは、一般的に「日常生活動作」と訳されることが多いです。 日常生活を送る上で、普段何気なくしていることや行動、行為を指す言葉の一つです。

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移乗動作の注意点

大半の高齢者の要介護者が必要とする福祉用具は第一位が車椅子で、歩行器、杖等になり車椅子は最も重要視されています。その為に移乗動作等で使用することが頻繁にある場合はまず第一の注意点として車椅子の事前点検を怠らないように注意して下さい。

車椅子の注意点

■ブレーキの効き具合
停車時にしっかりとブレーキが効いた状態でないと思わぬ事故に発展する恐れがあります。
■タイヤの空気圧
段差にぶつかった際のショックの吸収や乗り心地に影響してくるため、空気圧の確認は定期的におこないましょう。
■座席の座り心地
一般的な車椅子のシートや背もたれは、硬めの布などの素材で作られていますが、長時間座る場合、腰を痛めたり、褥瘡(床ずれ)の原因となったりする可能性があります。体への負担を軽減できるようにクッションを腰に当てる、座面に低反発マットを敷くなどの工夫をしましょう。
車椅子が不具合な状態で移乗動作に移れば大変な事故になる可能性がありますので最低でも月に1度くらいは点検を行うようにしてみて下さい。

車椅子移乗動作の注意点

ベッドから車椅子へ。車椅子からベッドへ。簡単なようで、慣れないうちはなかなかうまくいかないものです。基本的な手順やテクニックを覚えておかなければ、事故につながる恐れもあります。以下の注意点を確認して、安全に安心して移乗ができるよう努めましょう。
■ベッドと車椅子の間隔は15~30度
スムーズな移乗を可能にするためには、できる限りベッドと車椅子の位置を近づけることが重要です。ベッドのフレームと車椅子のホイールがある面との角度を15~30度に保ち、できる限り平行に停車するようにしましょう。
■ブレーキをかけ、フットレストを上げる
車椅子のハンドブレーキをしっかりと固定し、少しの弾みでも車椅子が動かないようにしましょう。また、つい忘れがちなのは、足を乗せるフットレストを下げたままにしてしまうケース。移乗の際に、間違えてフットレストを踏みつけてしまった場合、車椅子が跳ね上がって思わぬケガにつながることもあります。
■介助者の腕は相手の腰(背中)に、被介助者の腕は介助者の肩に手を回す
こまで準備ができたら、次はいよいよ移乗です。ベッドから車椅子に移乗する際、少しでもスムーズにいくように、まずはできるかぎり浅めにベッドに座ってもらいます。次に、介助者は相手の腰に両腕を回し、高齢者には自分の両肩に腕を回し抱きしめてもらうようにします。相手が腰に痛みや違和感を訴える場合は、背中を抱えるようにしましょう。
■前傾姿勢を意識し、自力で立ち上がりやすい状態にする
移乗を前に、お互いの体が密着した状態になりますが、介助者は、相手の上半身を自分がいる方向(前方)へ引き寄せるようにするのがポイントです。上半身をうまく預けてもらえれば、重心の集まるおしりを自力で浮かせやすくなるため、立ち上がりやすい体勢がとれるというわけです。
逆に自分の体を相手の体の方へ近づけていった場合、腕力だけでは体を持ち上げられず、そのままベッドへ介助者ごと倒れ込んでしまうこともあります。これは特に女性が男性を介助する場合によくある例です。
■介助者は両脚を広げ、安定した体勢を整える
上半身はお互い密着した状態ですが、介助者の下半身については、両脚を開いた状態で安定を保つことが重要です。相手の両脚の外側に片足を置き、支えるようにします。もう片方の脚は車椅子の外側に置き、座面に腰を落とした勢いで車椅子が動かないようにしましょう。
■声かけでお互いの意思疎通を図る
体を持ち上げる直前に「“1、2の3!”で動かします」と声をかけ、意思確認をおこないます。お互いのタイミングがピタリと合えば、より少ない力でスムーズな移乗が可能です。

移乗の注意点は車椅子からベッドへ戻る際も同じように要介護者が無事にベットに落ち着けるまで注意するように心配りして事故防止に努めましょう。

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まとめ

ベットから車椅子迄の移動が、健常者にとってはたやすい事も障害者や高齢者にとっては、危険と一体化した行動になる「移乗動作」は介護者の経験、知識、観察力に要介護者の安全と安心を任せる事になりますので、決してあってはならない事ですが「安易な移乗介助」には十分に気をつけて下さい。

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