福祉作業所とはどんなところ?役割は?

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大人になると大抵の人は、その多くの時間を働く事に費やします。仕事の内容や働く理由はそれぞれ違いますが、実に多くの人が働いています。「職業に貴賤はないと思うけど、生き方には貴賤がありますねェ」、永六輔さんは言いました。働くという事は収入を得る手段であり、自己表現の場であり、そして社会貢献の一種である事から、働く意欲はごく自然な欲求と言えます。

福祉作業所とは

日本国憲法(第27条)は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」という勤労の権利と義務を規定しています。国家は国民に勤労の機会を与えなければならず、同時に国民は与えられた機会を活用し勤労しなければなりません。その意図は障害者に対しても反映されていて、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」という法律があります。これにより事業主(従業員数50人以上)は社会連帯の責務を負い、全従業員数の2.0%の障害者を雇用する事が義務付けられています。
このように障害者にも法的に働く権利が与えられていてます。しかし、希望者全員が職に就けるという訳ではなく、また事前に訓練を要する障害者もいます。福祉作業所とは、障害者が集い活動する「通所施設」であると同時に、一般企業などに就職が困難な障害者に提供される援助付きの職場を指します。1970年頃から出現し始め、1980年代にその設置が本格化したと言われています。障害者自立支援法施行(2006年)以前は各自治体の補助金などによりその運営が支えられてきましたが、現在は、障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)を根拠とした支援とされていて、措置制度(障害者に対し、行政が利用できるサービスを決定する制度)時代に設置された事業所についても、地域活動支援センター(障害者の活動を支持する福祉施設)が実施する活動として移行されつつあります。

 

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福祉作業所の役割

福祉作業所では、障害者は企業からの下請け作業(梱包材の組み立てや軽作業)や工芸品・食品などの製造を行い、作業所の職員はその作業のサポートや食事・送迎の介助を行います。その運営費は企業活動から得られる売上に加え、自治体からの認可を受けた作業所に支払われる給付金により成り立っています。
福祉作業所には、障害者にとっての「労働の場」と「労働の訓練の場」という、主に2つの側面があります。「労働の場」では、自分の能力を生かし、労働する事の対価として賃金を得て、自立および自己実現を目的とします。「労働の訓練の場」では、労働に必要な知識や技術を得て、その後の労働開始を目的とします。また他人との交流の場である事から、「障害者が日中過ごす場」や「病状の安定・改善を図る場」としての機能も果たしています。
一方、福祉作業所は社会的な役割も担っています。「障害者総合支援法」では、「基本的人権の尊重」や「社会参加の機会の確保」などが基本理念とされています。この法律の意義により、障害者には日常生活および社会生活を営む事ができるよう、必要とされる障害福祉サービスやそれに係る給付が施されます。障害者福祉サービスの一環である福祉作業所は、障害者が利用できる社会資源としても位置付けられます。

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福祉作業所の例

福祉作業所には、障害者の目的や状態によって異なる施設があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

小規模作業所(共同作業所)

1970年代から始まった法定外施設。一般的に「福祉作業所」とは、この「小規模作業所」を指す場合が多いとされています。障害者団体や家族・ボランティアなどにより運営されていて、機能訓練や生活支援・職業訓練などを目的としています。2006年、障害者自立支援法(現障害者総合支援法)施行によって新たなサービス体系となり、無認可事業であった小規模作業所は、主に地域活動支援センターⅢ型(機能訓練・社会適応訓練・入浴等のサービス)や継続型就労支援作業所B型事業所(下記参照)への移行が行われています。

継続型就労支援作業所

障害者総合支援法を根拠として障害福祉サービスを実施する施設。障害により一般企業などで働く事が困難な障害者に提供される援助付きの仕事および訓練の場です。一般企業などでの就労を目指し、それに必要な職業訓練を受けられます。この施設を利用するには自治体が交付する福祉サービス受給者証が必要です。また、継続型就労支援作業所には以下の通り、A型事業所とB型事業所とがあります。

A型事業所(雇用型)

事業所と利用する障害者との間に雇用契約が締結されます。その為、各都道府県が定める最低賃金が適用され、給与は賃金(労働の対価として使用者が労働者に支払うもの)として支払われます。

B型事業所(非雇用型)

事業所と利用する障害者との間に雇用契約が締結されません。その為、給与は工賃(物を製作・加工する労力に対する手間賃)として支払われます。

就労移行支援事業所

障害者総合支援法を根拠として障害福祉サービスを実施する施設。障害により、現時点では一般企業などで働く事が困難な障害者に提供される訓練の場です。一般企業などでの就労を目指し、それに必要な職業訓練・就職活動支援・職場での定着支援を受けられます。この施設を利用するには自治体が交付する福祉サービス受給者証が必要です。訓練施設という性質上、基本的には給与の支払いはありません。また、利用期間は2年以内で、最大1年の更新が可能です。

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福祉作業所の注意点

都道府県や市町村からの指定により運営されている福祉作業所を利用するには、原則として利用者に対し利用料の1割の自己負担が発生し、残りの9割は介護給付費や訓練等給付費として公費により賄われます。それに加え、送迎費や食費などは実費としてかかります。福祉作業所の給与水準は極めて低く、平成27年度のB型事業所の平均工賃は15,033円/月(193円/時間)、A型事業所でも67,795円/月(769円/時間)となっています。よって給与として支払われる賃金(工賃)よりも利用に際し支払う費用の方が上回るケースは少なくなく、働く意欲に悪影響を及ぼします。
A型事業所の給与が低い理由には、その労働時間にあります。A型事業所では雇用契約が締結される為、最低賃金の保証および各種保険(雇用保険・社会保険など)の加入義務が生じ、運営にあたり資金面でのハードルが高くなります。しかし、社会保険は労働時間を週30時間未満(正社員が40時間の場合)、週3日未満に抑える事で加入対象から外れるので、売上に伸び悩む事業所は軽費削減として労働時間や日数を枠内に収める策を講じます。またB型事業所においては更に生産性が低い為、安定した売上を創り出す事は困難とされています。その為、運営に必要な費用は給付金に頼る事となり、給付金は利用者の人数や働いた日数に応じて支払われるという性質上、利用者の囲い込みが行われる可能性があります。結果、一般企業での就労が可能な状態になっても利用者を手放さず、その時期を先延ばしにする事態が生じてしまうのです。

まとめ

労働とは、それぞれの行為によって社会的価値を形成する活動に他なりません。福祉作業所での活動は、生産性を伴う「仕事」であるのか、あるいはその準備段階である「訓練」であるかによって、社会的な存在意義が異なります。福祉作業所は福祉的な要素を含む以上、生産性の向上に向けた訓練に勤しむ必要があり、それこそが障害者の志を具現化する手段と言えるのではないでしょうか。

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