音楽療法が認知症に効く!?やり方は?注意点は?

Music therapy group for Alzheimer's patients in George Hall. Betsey King in green.

認知症の介護。徘徊、暴力・暴言、食事、排泄などのお世話の他、進行していく症状に悩んでいる人も多いと思います。少しでも症状を軽く、穏やかに生活してもらいたいというのは介護をする人の共通の思いではないでしょうか。そんな中、音楽療法というものが注目されています。音楽療法とはどのようなものなのでしょうか。

 

音楽療法とは

何をするの?

音楽療法は楽器の演奏をしたり、歌ったり、音楽を聴く、演奏を観るということをします。体の障害や心の病気、年齢やそれぞれの趣味趣向にあったものを選びます。演奏や歌を楽しんだり、体が動かない声も出ない人は聴くだけでも参加できるなど状態に合わせていろいろな関わり方ができます。

音楽療法の目的は?

音楽療法では演奏や歌がうまくなることなどは目的としていません。また病気を治すためのものというより症状の軽減、心や社会性の成長などサポート的な役割をしています。音楽を通じてのコミュニケーションをとったり、仲間や知り合いを増やしたり、ストレスの発散や心を落ち着かせることなどを目的としています。
なにより音楽療法で最も大切なのは「楽しく」行うことです。

どんな人に効果があるの?

音楽療法は認知症や介護の世界だけではなく心の病やリハビリテーション、病気がなくても心を穏やかにしたり社会性を養ったりとさまざまな分野でも活躍しています。
対象になるのは高齢者や障がいを抱える人に限らずストレスや悩みをかかる人の心のケアとしても用いられます。

どんな人ができるの?

音楽療法士という専門の知識を持った人がいます。音楽療法士は専門知識を身につけ音楽療法を効果的に行うトレーニングをしてきた人です。音楽の持つさまざまな効果を使って問題解決に取り組みます。主に病院や施設、学校などで音楽を通じてリハビリテーションや心のケアなどを行っています。
音楽療法士でなければ行えないわけではなく、簡単な方法であれば一般の人でも行えます。

 

 

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音楽療法のやり方

演奏する・歌う(能動的音楽療法)

簡単に言うと「自分でやる」ということです。楽器を演奏する、歌う、踊る(動く)など対象となる人に自分でやってもらう方法です。演奏や歌を通じて達成感や体を使うことで運動やストレス解消にもなります。

聴く・観る(受動的音楽療法)

音楽を聴く、演奏を観ることを通じて音楽を感じてもらいます。障害などにより演奏や歌うことができない人や好きではない人でも気軽に参加しやすく、音楽に関わることのきっかけ作りとしても取り組みやすい方法です。
寝たきりの人やコミュニケーションが困難な状態の人でも「聴く」というちからは最後まで残ると言われています。認知症が進行しても取り組みやすい方法です。

体を動かす(リトミック)

ダンスとまではいかなくても、音楽に合わせて簡単な動きを組み合わせます。演奏でも体を使いますが、演奏と違って間違えても音楽は変わりません。上手い下手が演奏よりわかりにくく、多少合っていなかったとしても楽しく行うことができます。

集団音楽療法

複数の人たちが集まって集団で行う音楽療法のかたちです。施設等で行われている音楽療法は基本的にこの集団的音楽療法が多いようです。たくさんの人が集まることで集団の力が働きます。人との交流がうまれたり、恥ずかしがり屋の人でも参加しやすいなどのメリットがあります。

個別音楽療法

主導側と受け手が1対1で行う音楽療法のかたちです。個別で行うことでより個性や特徴に合わせた音楽療法が行えます。受け手の反応もわかりやすく深い関わりが持ちやすいというメリットがあります。

 

音楽療法の期待できる効果

生理的効果

テンポの良いの曲を聴いてなんだかわからないけど踊りたくなったり、穏やかな曲に眠気を覚えたりしたことはないでしょうか。速いテンポの音楽を聴くことで脳の働きが活発になったり血圧が上がるなどの変化がおきます。このように音楽を聴くことで体の細胞や心拍のリズムなどが反応する効果を言います。

心理的効果

音楽を聴くことで生理的作用、経験や記憶などの影響を受けて元気が出たり悲しくなったりと感情に変化が起きる効果をいいます。恋愛がテーマの曲を聴いてドキドキしたり、明るい曲を聴いて前向きになれたりなど心に変化が起きる効果をいいます。

社会的効果

例えば複数の人と一つの曲を完成させる過程で、相談したり励ましたり、話題の一つとしてでも会話が生まれるなど音楽を通じて交流が生まれます。誰かと何かをやり遂げたり、同じ話題を共有することで他者と関わるきっかけになるなど、自分以外の人(社会)との関わりに影響を与える効果を言います。

心の浄化

ストレスや悩みを抱えているときにカラオケボックスで気持ちよく熱唱したら胸がすっとした。ということはないでしょうか。大きな声で歌を歌ったり、激しい演奏をしたり、難しい音楽を完成させたりすることで、悩みや苦しみが軽くなることがあります。

回想

思い出の曲、懐かしい曲などを聴くことで当時のことを思い出したりします。例えばある曲を「昔付き合っていた人が好きだった曲」とだけ覚えていたとして、実際にその音楽を聴くことでその当時の出来事や普段あまり思い出さなかったその曲にまつわる出来事を思い出したりするきっかけになることがあります。

 

 

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音楽療法と認知症

記憶力の改善

同じ質問したりくり繰り返しどこかへ行こうとする行為が減り、さらに多少のことは覚えていることが多くなった。というような変化が見られることがあります。理由としては、音楽によって脳が活性化したという生理的効果や、心が安定したことによって心配ごとが少なくなったり他人の言っていることに耳を傾ける余裕が出来たなど心理的効果が考えられます。

懐かしい曲で忘れていた事を思い出す

認知症の人が「思い出せない」からといって記憶が頭の中から消えてしまったとは限りません。脳の奥にある記憶や散らばった記憶をうまく処理できないために表現できないということもあります。懐かしい音楽を聴くことで当時のことを鮮明に思い出し、それがきっかけとなって昔のことを話し出すことがあります。

イライラ改善

認知症の人はすぐ忘れてしまうから気楽でいいと誤解されることがあります。実際は「忘れてしまうこと」や「何をどうしていいのかわからないこと」にとても苦しんでいます。そうした日々のストレスや苦痛が「物盗られ妄想」や「暴力、暴言」の原動力になっていることもあります。イライラしているときはつい誰かのせいにしてしまったり、きつく当たったりしてしまうのは認知症になっていなくても同じですよね。音楽の力によってストレスや苦痛を和らげることによってイライラを軽減できることがあります。

睡眠安定

高齢になると睡眠を促すセロトニンという脳で作られる物質が減少し、さらに認知症を抱えていると規則正しい生活が難しいために昼夜逆転が起きやすくなります。そこで音楽の脳を落ち着かせる生理的効果や安心を感じられるような心理的効果を利用して睡眠を促します。

食欲改善

食欲の減退には内蔵の影響もありますが悩みや心配事があるときも食欲が落ちてしまいます。音楽の力で気分を変えることによって食欲改善につながることもあります。また、歌や楽器の演奏、リトミックなど体を使うことでもお腹が減り健康的な体づくりに役立ちます。

感情表出

重度の認知症で声をかけてもほとんど反応がない状態になっても音楽を聞くことができます。実際にそのような状態の人でも音楽を聴いている時だけは笑みを浮かべたり、心地よさそうな表情に変わるなどの事例があります。こういった変化は本人の緩和だけでなく、介護をする人など周囲の人のやりがいなどにも影響を与えることができます。

 

注意点

対象者について知る

施設や複数の人たちに行う場合はその個人または集団の特徴や抱える問題、どうしていきたいのかなど情報を集めて音楽療法の計画を立てます。

具体的な目的を設定

例えばストレス発散が目的であれば大きな声が出せる曲や明るい曲を選んだり、心を落ち着かせたい時は穏やかな曲をえらんだりします。楽器の演奏や歌を通じて曲を完成させることを目標に生きがい、やりがいを感じてもらうこともできます。

曲や楽器を決める

体がどのくらい動かせるか、どの楽器なら使えるか、歌はうたえるか、聴くことくらいならできるかなどその人の状態に合わせた方法を選びます。人それぞれの個性も大切です。演奏や難しいことに意欲的な人もいればとにかく歌が好きという人もいるかと思います。逆に嫌いな人もいます。音楽療法を行う目的に有効な方法を選びましょう。

できなくて良い

できるように支援するというより向き合って交流することに重点を置きます。音楽療法は楽しくが基本です。音楽の善し悪しではなく、音楽を通じて話をしたり手伝ったりなどコミュニケーションを多く取るようにします。

反応をよく見る

嫌だ嫌だと言っていても本当はやりたい人や、本当に嫌な人もいます。いきなり集団の真ん中ではなく最初は隅の方でひっそりやりたい人や最初から中心でやりたい人など個性や状況、タイミングがあります。表情や参加意欲など対象となる人の反応はどうであったのか振り返りを行い、次回の改善に役立てたりします。

受け手の視点で

人にはそれぞれ好みがあり、感じ方も違います。この曲は楽しいはずだと思っていても受け手は興味がなかったりうるさいなと感じてしまうこともあります。音楽にはその人の時代背景や記憶とも関係があります。受け手の視点に立って選曲や手法を選ぶことが大切です。

無理強いしない

音楽療法は楽しく行うことが大切です。演奏が嫌いな人、人の集まるところが苦手な人を無理やり参加させるとかえって嫌いになってしまうこともあります。嫌がる人にはその人がやりやすい形でのコミュニケーションが必要になります。

 

 

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まとめ

音楽療法にはさまざまなやり方や形式がありますが、きまりというものがないとも言えます。いきなり音楽療法士に依頼するのはハードルが高いと感じる人はラジカセなどで音楽を流すことから始めても良いのではないでしょうか。誰かと一緒に音楽を聴く、楽しむということだけでも認知症の人の助けになるかもしれません。

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