嚥下(えんげ)障害ってどんな状態?メカニズムは?

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私たちは、普段何気なく、何の疑問も持たずに食べたり飲んだりしています。もし、「食べたくても食べられない、飲み込めない」状態になったらどうでしょうか?
そのような状態を、嚥下困難とか嚥下障害と言うのですが、専門的な言葉で漢字も難しく、あまり聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。
嚥下障害になってしまうと、家族や友人と食事も簡単にできなくなってしまうのです。
元気なうちは想像もつかないですよね。でも、嚥下障害は加齢だけが原因ではありません。誰にでもなりうる病気です。
いざという時のために、まずは知識を習得していきましょう。

嚥下障害とは

私たちは普段何かを食べるために食べ物を口に入れます。
「物を食べる」という動作は、食べ物を認識し、口に入れ、噛んで飲み込むまでの一連の動作のことを言うのですが、この一連の動作をもう詳しく説明します。

一連の動作

1、先行期…食物の形や量、質などを認識する
2、準備期…食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする
3、口腔期…食物を口から咽に送り込む
4、咽頭期…食物を咽から食道に送り込む
5、食道期…食物を食道から胃に送り込む

いわゆる、物を食べるという一連の動作の中の「飲み込む」という動作を「嚥下(えんげ)」と言うのですが、上記の中では4と5がそれにあたります。
つまり、「嚥下障害」とは「飲み込みの障害」ということになります。
嚥下障害は、加齢や原因となる何らかの病気を持っていることで発症することが多く、子供から高齢の方まで年齢に関係なく症状があらわれます。

嚥下障害かどうかの診断方法

全身状態をチェックします。その後、嚥下関連の器官の機能を判断します。
具体的な検査方法としては、

検査方法

・神経学的検査
・反復唾液嚥下テスト
・水飲みテスト
・食物テスト
・嚥下造影検査
・嚥下内視鏡検査
・筋電図検査
・嚥下圧検査
・MEG検査
・fMRI検査 (画像検査、磁気共鳴機能画像法、functional MRI検査)

のような検査があります。

 

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嚥下障害の症状とは

嚥下障害になると、次のような症状が見られます。

症状

・食べ物を飲み込みにくくなる
・飲み込むときに、痛みがある
・食事中にむせたり咳き込む
・食事中に食べ物や飲み物が口からよくこぼれる
・食事に時間がかかる
・食後に口の中に食物が残っている
・食べ物や胃液が逆流したり嘔吐する
・食事の後、声が変わる
・食事をすると疲れる
・食後に痰が出る
・よだれが出る
・口が乾く
・食事中でなくても突然むせたり、咳込む
・噛まなくてよいものを好むようになる
・体重が徐々に減ってきた
・水分をとりたがらない(尿量が減った)
・発熱を繰り返す(誤嚥性肺炎の疑い)

たくさん書きましたが、まず、食べ物が飲み込みにくくなったり(嚥下困難)、食事の時のむせ(誤嚥)が現れて異変に気付くようになります。小児や神経障害がある人などは嚥下困難の訴えがない場合もありますが、そのような場合は食事の内容や状態で判断することもできます。固いもの、ぱさついたものは飲み込みにくいため、これらを避けて飲み込みやすい半流動物を好むようになったり、食事に時間がかかったりするようになります。
誤嚥の有無は飲み込んだあとのむせや咳、食後によく痰が出るなどから判断できます。水を飲んだあとに痰が絡んだような声が出る場合には、喉頭まで食べ物が入っている可能性もあり、肺炎を起こしやすい状況になっている可能性もあるため注意が必要です。
これらの症状が見られたら、早めに受診するようにしましょう。

 

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嚥下障害の原因と治療法

①嚥下障害の原因

嚥下(飲み込む)という動作には多くの器官が関わっているため、それらの器官が障害を受けるさまざまな疾患で、嚥下障害が起こります。
原因は3つに分けられ、その中でさらに細かく分けられます。

三つの原因

1.形態的な異常…口腔・咽頭・食道など嚥下のために必要な身体の構造的な異常
・先天的な原因…口蓋裂、その他顎形態の異常など
・後天的な原因…歯の噛み合わせの不正、歯の欠損、咽頭や食道での障害

2.神経、筋系の異常…神経に麻痺がおこることで器官がうまく働かない
・発達障害…脳性麻痺、精神発達の遅延など
・中途障害…脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍、脳外傷など

3.その他…加齢に伴う機能低下

これらのように、子供から高齢者まであらゆる年齢層に見られるのです。
さまざまな原因がある嚥下障害の症状を改善していくには、まず原因は何かを明らかにして、それに合った治療法を選択すことが大事です。

②嚥下障害の治療法

治療法としては、誤嚥防止の観点から、大きく嚥下の動作を獲得するリハビリ手術にわけられます。他にも食事介助や口腔ケアなどがあります。

4つの治療法

1.リハビリ…あとで述べますが、直接的な訓練と間接的な訓練があります。
2.手術療法…原因となる部位を切除することにより、症状の改善をはかります。
3.口腔ケア…食べ物を摂取しないことで唾液の分泌が減り、口腔内に細菌が繁殖しやすくなります。それが原因で肺炎などを引き起こす可能性があるので、歯磨きをしたり、唾液促進のマッサージをしたりします。
4.食事介助…食べやすい姿勢の指導や口への運び方の指導、また、周囲の環境整備などの介助の方法を改善することにより、食事ができるようになります。

 

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嚥下障害のリハビリ

嚥下障害のリハビリには、嚥下障害になったときの改善方法としての役割と、嚥下障害にならないための予防のトレーニングとしての二つの役割があります。
そのことをふまえて、嚥下障害のリハビリについて見ていきましょう。嚥下障害のリハビリには、直接的訓練と間接的訓練があります。

・直接的訓練…食べ物を使った訓練

ゼリーなど嚥下しやすいものから始め、徐々に食塊形成や咀嚼を必要とするものに移行。

・食事形態の調整(段階的嚥下訓練)

複数回嚥下訓練

・間接的訓練…食べ物を使わない訓練

口で噛む、食べ物を飲み込むといった機能を回復させるために舌や口を使ったトレーニング

・口腔ケア

歯ブラシなどを用いて、口腔内をきれいにし、食べ物の残りかすや、細菌を除去し、口腔内の衛生状態を改善させます。

・嚥下体操

食事の前に口や舌、のどの運動を行い、筋力アップを図る。

・リラクゼーション

食べる前の準備体操などにより、嚥下に関する器官がスムーズに働くように準備する。

・ブローイング訓練

コップに水を注ぎ、ストローで息を吹き入れます。軟口蓋の挙上不全の改善を図ります
のどのアイスマッサージ
凍らせた綿棒に水をつけ、粘膜面を軽くなでたり、押したりして、嚥下反射を誘発する方法
頭部挙上訓練
喉頭を挙上させる舌骨上筋群を強化し、喉頭挙上運動および食道入口部開大を促進する方法

・バルーンストレッチ法

食道入口部の食塊通過が悪いときに行われます。球状または筒状バルーンを用いて同部をストレッチします

・舌尖音の構音訓練

構音訓練により舌、唇の自力運動を行い、筋力強化を図ります。

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嚥下障害の注意点

先にお話ししたリハビリと同じようなところもありますが、普段の日常生活で気をつけることをあげておきます。

普段の日常生活の注意点

・食事面で気をつける
・急がずゆっくり食べる
・少しずつ口に入れ、よく噛んで食べる
・口の中にあるものを飲み込んでから次のものを口に入れる
・椅子に深く座り姿勢よく食べる
・テレビを見ながらなどの「ながら食事」はしない
・衛生面で気をつける
嚥下障害になると、きちんと飲み込めないため口の中に他b物が残っている可能性が高いです。それをそのまま放置してしまうと口内で細菌が繁殖し、歯周病を引き起こしたり、誤嚥により細菌が肺に侵入して肺炎を起こしたりします。
ですので、食後は毎回きちんと歯磨きをし、口の中は清潔に保つこが大事です。
・呼吸のトレーニング
腹式呼吸をする。腹式呼吸をすることにより器官に食べ物が入った場合でも排出しやすくなる。
・首・口・舌のトレーニング
首・口・舌のトレーニングをすることで、周辺の筋肉の緊張がやわらぎ、リラックスすることで筋肉運動をスムーズに行える。
首…肩の力を抜き、首を前後左右にゆっくり動かす。
口…頬をふくらませたり、へこませたりする。
舌…思いっきり前に出したり引っ込めたりする。
・発音のトレーニング
食べ物を飲み込むときと同じ器官である、口・舌・喉を使うので、器官を鍛えることができる。パ・ラ・タ・カ・マ行を発音する。

また、嚥下障害が進んでいる場合は、病院などに相談して、専門的に治療やリハビリをやっている施設でトレーニングをうけましょう。

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まとめ

嚥下障害は特に高齢者にとっては「誤嚥性肺炎」を引き起こす原因にもなり、死につながるケースも多く、侮れない病気です。加齢とともに嚥下機能の低下が見られるはある程度仕方のないことではありますが、元気なうちから予防も兼ねたトレーニングもでき
るのです。
日常生活においてできるちょっとしたことから始めて、嚥下障害にならないような身体作りをしていきましょう。また、嚥下障害になっても、それまでとなるべく変わらない生活ができるためにリハビリはとても重要です。専門のスタッフに相談しながらみんなで協力してやっていきましょう。

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