認知症の被害妄想の対処の仕方は?注意点は?

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認知症が進行していくと、様々な症状が発生します。その中でも一般的な概念から逸脱するような行動に及ぶと、周囲の人から「問題行動」と捉えられ、事態は更に深刻になります。認知症の被害妄想は、比較的軽度の段階から見られる症状とされています。

認知症の初期段階において、その症状から引き起される問題を回避する為にも、予見し対応する必要があります。

 

認知症の被害妄想とは

妄想とは精神症状のひとつで、ありもしない事柄に対し抱く確信の事です。
当然、妄想している本人にはその事柄が架空であるという認識はありません。根拠に乏しい(もしくは根拠がない)にも関わらず非常に強く主張する傾向があり、現実を眼前にしたり他者から説得されてもその誤謬が訂正不可能。
被害妄想はその中で最も一般的な妄想であり、他者からの干渉により自分に被害が及んでいると思い込む妄想性障害です。

認知症や老人性うつ病の代表的な被害妄想に「盗害(物盗られ)妄想」、つまり金品を盗まれたと思い込む妄想があります。これは、「どこにしまったか忘れた」「どこかに置き忘れた」という考えには及ばず、他人に盗まれたと信じてしまう妄想であり、アルツハイマー型認知症でよく見られる妄想です。他にも、配偶者や恋人が不貞を行っていると思い込む「嫉妬妄想」や、家族から邪魔者扱いされていると思い込む「見捨てられ妄想」、身近な人が他の人とすり替わってしまったと確信する「カプグラ症候群」などがあります。認知症の被害妄想には、日頃よく関わっている家族や介護者など、身近な人が対象となりやすいという特徴があります。

統合失調症の主な症状も妄想ですが、その内容が固定されているのに対し、認知症の妄想は内容が一貫していなくコロコロ変わります。

 

 

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認知症の被害妄想の原因

被害妄想の原因は脳の老化にあると言われています。認知症の場合は中核症状(脳の神経細胞が壊れる事により直接出現する症状)である記憶障害や思考力の低下がこれにあたります。記憶障害や思考力の低下により、物を無くす事が増えていき、それに伴い物盗られ妄想に発展する機会自体も増えていきます。また、自身の衰えにより自分の存在意義を見出せず、介護を要している現実を不面目に感じ、それが「嫉妬妄想」や「見捨てられ妄想」にも結び付くとも考えられます。

また、病気や身体的な痛み、環境の変化などが引き起こす不安定な心理状態に起因する場合もあります。大きな不安を抱えている状態、つまり心に余裕がない状態なので、自分の非を認める事が追い討ちと感じてしまうのかもしれません。

その他、元来の性格や生活暦、社会的要因にも関係があると言われています。元々が不安症の方は、老化に伴う不安が加えられ、更に不安が大きくなってしまう可能性があります。しっかり者で周囲からの信頼も厚かった方は、その栄華を諦める事は難しく、社会的に生産性が無い存在である事も事実です。

このように認知症の被害妄想の原因は非常に多種多様で、様々な要素が絡まり引き金となっていると言えます。

 

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認知症の被害妄想対処法と予防

認知症の被害妄想、例えば「盗害妄想」の場合、「単なるもの忘れ」では起こりえなかった事態が発生します。「物を無くす」という時点では個人的な問題(無くした物にもよりますが)にとどまっていましたが、「他者を疑う」という段階ではその枠を飛び越え、周囲に影響を及ぼし始めます。

介護に関する問題全般に言える事ですが、関係者は一人で悩まず、周囲を巻き込み解決に向かう事が必要です。ここでは被害妄想の「対処法」とその「予防」に分けて、考えてみたいと思います。

対処法

被害妄想の症状が確認できたら、早期に専門機関(もの忘れ外来など)に相談し、原因究明に努めます。前項で述べたように、その特定は難しいですが、考えられる原因によって対応が変わります。また、向精神薬で効果が期待できるケースも見られます。事実と反する事を強く確信する症状から、説得に応じる可能性は低く、実際に接する時はありのままを受け止める受容的態度が好ましいとされています。とはいっても積極的に肯定しては更に疑われてしまうので、かといって否定もせず、親身に耳を傾けるという事です。時には、上手に話しを受け流している間に、症状が落ち着く場合もあります。

予防

認知症により引き起こされる被害妄想の予防は、要するに認知症自体を予防する事を意味します。特に記憶障害や思考力の低下は直接被害妄想に関わるので、その部分の機能維持増進を意識します。また、心理的不安も大きく関係がある事から、引越しなど過度の環境変化をできるだけ避け、健やかな心理状態で過ごせるよう心がけます。

 

認知症の被害妄想の注意点

認知症の被害妄想は身近な人、つまり家族や介護者が疑われやすい傾向にあります。
普段からよく顔を合わせていて、親密で深い関係にある人ほど標的になりやすいと言えます。家族や介護者からすると、いつも面倒を見ているのに疑われるというのは大変苦痛で心理的ダメージも大きく、介護負担は更に増大します。時には周囲の人、別居家族からの無理解の末、疑われる事もあるでしょう。その結果、関係の決裂に至る可能性も十分に考えられ、そうなると被害妄想も一層確固たるものになります。
何よりケアする役割を担っていた周囲の人がいなくなってしまっては、解決の糸口は見つからず、またゼロから(被害妄想が始まっているとすればマイナスから)始めるという悪循環を生んでしまいます。そういった状況を避けるために、家族や介護者は「一定の距離を置く」という選択肢を残しておきましょう。

認知症の方は「大切にされ過ぎ」ても心理的負担を感じる場合があります。丁度良い程度という関わり方も難しいと思いますが、感謝の気持ちから後ろめたい気持ちに変化し、心に過剰な負荷がかかるのかもしれません。このように「どうしても自分が寄り添わなければならない」という観念は認知症の方にも、そして自分自身にも重圧となり得ます。

切羽詰った状況では、関わる家族を他の家族に変えたり介護者を変更したりなども、むしろ積極的に取り入れるべき策であると思われます。

 

 

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まとめ

認知症の被害妄想に対処する場合、一番避けなくてはならないのが「否定する」事です。真っ向からの否定は、認知症進行の速度を速めます。普段の生活に置き換えて考えると、疑われた事に対して弁明すらできない事は理不尽であり、また屈辱でもあります。

そんな中でも寛容な対応が求めらるのが認知症の被害妄想であり、決して一人で抱え込んではいけない問題なのです。

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