アドボカシーってどんな意味?どんな事例があるの?

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高齢化社会にあって、近年では「権利擁護」という言葉をよく耳にするようになりました。
権利擁護はアドボカシ―という言葉で表されることもあります。
国や市町村では高齢者や障がい者の尊厳を守るべく、虐待の防止や成年後見人などをはじめとしたアドボカシ―のための施策に積極的な取り組みが見られています。
アドボカシ―について詳しくみていきましょう。

 

アドボカシーとは

アドボカシ―とは、自己の権利を表明することが困難な寝たきりの高齢者や、痴呆症の高齢者、障がい者の代わりに、代理人が権利を表明することをいいます。
認知症や寝たきりの高齢者、障がい者は、自己の権利を行使できずに権利が侵害されている人が多くいるのかもしれません。
そのような状況においても権利を行使できるように支援し代弁することを「アドボカシ―(権利擁護)」といいます。
アドボカシーとは、このように当事者の権利主張を代理人が代弁するということを意味しています。
アドボカシーは対象者によって「ケースアドボカシー」と「クラスアドボカシー」とに大別することができます。アドボカシ―の種類については詳しく後述します。

 

 

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アドボカシーの役割

日本国憲法は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定しています。基本的人権が生まれながらにして持っているものとして、すべての国民に平等に保障されているのです。
また憲法は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とも規定しています。これは個人の幸福追求権を保障したものです。
しかし、高齢の一人暮らしでは生活困難に陥ったり、物忘れ、認知症による判断力の低下などといった理由により、権利を行使できなかったり人権が侵害される可能性があります。
障がい者においてもそうである可能性があります。
近年では高齢者が虐待を受けたり、詐欺や悪質商法の被害などに遭い権利侵害にあうということが後を絶ちません。
高齢者や障がい者の権利を守ることがアドボカシ―の役割と言えるでしょう。

 

アドボカシーの種類

アドボカシーはいくつかの種類に分けられますが、まずは対象者によって「ケースアドボカシー」と「クラスアドボカシー」とに大別することができますので先にこの2種類について詳しくみていきましょう。

■ケースアドボカシー

対象:個人の権利を守るべく、個別を対象として行われる活動。
本来受けられるはずの公的扶助やサービスなどがあるにもかかわらず、その権利を知らなかったり、知っていても行使が困難な状況にある人々が社会にはたくさんいます。
そうした人たちに適切な支援が行き届くように働きかけることが、ケースアドボカシーだといえます。
ケースアドボカシーの目的はあくまでも個別の権利を尊重することですので、対象者個人の気持ちや意向・要望を充分に理解したうえで行われる必要があります。

■クラスアドボカシー

対象:特定の対象者に限定せず、地域全体の状況を改善するために取り組む活動。
社会制度の不備や、他の地域と比較して公的支援が少ない地域などに対して、行政に制度や政策の改善を求めて働きかけるのが、クラスアドボカシーの活動です。
この活動は、同じような属性にある人々すべてにポジティブな影響を与えることになりますので、「クラスアドボカシー」と呼ばれています。

ケースアドボカシーとクラスアドボカシーはどちらか一方があればよいというものではありません。個々の利益と公共の利益との両面から権利を守っていくことこそが、社会的に不利な立場にある人々を擁護することに繋がると言えます。
その他のアドボカシ―活動は以下のような種類があります。

<セルフ・アドボカシー>

権利擁護の活動を当事者自ら行う

<ピア・アドボカシー>

同じ問題を抱える人が集まり、互いのニードを代弁する

<コーズ・アドボカシー>

集団のニーズのために、制度改革や資源の開発を目指すことを目的とする

 

 

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アドボカシーの事例

では、アドボカシ―の事例を過去の介護福祉士国家試験から考えてみましょう。

■問題

Aさん(82歳、女性)は、アルバイト店員の息子(56歳)と二人暮らしである。Aさんは、 3年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’stype)と診断された。現在、要介護2と認定されて訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)を支給限度額まで利用している。Aさんは、身の回りのことに常に見守りや介助が必要であり、一人で外出して道が分からなくなり、何度も警察に保護されている。訪問介護事業所が、アドボカシー(advocacy)の視点からAさんと息子を支援する場合の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

(1)自分の食事も作ってほしいという息子の要望に、対応できないと断る。
(2)息子の外出時は、Aさんが部屋から出られないように施錠することを提案する。
(3)Aさんと息子に相談の上、社会福祉協議会に見守りボランティアの派遣を働きかける。
(4)息子に、市内に認知症家族の会があることを知らせる。
(5)町内会に、回覧板でAさんと息子の状況を詳しく知らせるように働きかける。

( 以上、2016年 介護福祉士国家試験 人間の尊厳と自立 より抜粋 )

■回答

正解は3です。

■解説

この問題の事例においてポイントとなるは「アドボカシ―=代弁」という考え方です。
アドボカシーでは、自分で訴えることのできない人や、自己主張することが困難な人の権利擁護を目的としています。このことを踏まえて、一つ一つの選択肢を解説していきます。

(1)訪問介護員の行う家事援助は制度上、利用者であるAさんが対象となるため、同居家族の食事を作ることは出来ないので断るという結論になります。しかし設問では、「アドボカシーの視点」を問うているので、単に断るだけでは適切とは言えません。

(2)施錠することは身体拘束にあたるので、提案は不適切である。

(3)Aさんと息子に相談し、以降の確認と了解を得ながら社会資源の活用を図ること
は、権利擁護の視点からもふさわしい方法と言えます。

(4)息子の支援としては一つの選択肢として考えられるが、Aさんのアドボカシーの視点が弱い。

(5)近隣にAさんと息子の状況を知らせることが必要な場合もあるが、個人情報保護の観点からもAさんと息子に先に相談する必要があります

 

注意点

アドボカシーを行うことにはリスクも伴いますので注意する点もあります。
アドボカシ―は、行う人個人の義務感や感性、判断に委ねる部分が多い活動であります。
そのため、強い義務感から思い込みや自己判断で対象者の気持ちを代弁してしまうことに気が付かず行ってしまう可能性があります。

アドボカシ―を行う場合は自身の立場と担う役割の大きさを十分に理解することが大切です。そして、このあくまでも対象者の自己決定をサポートする立場であるということを忘れてはいけません。自分の考えを押し付けないということが最も重要です。

あくまでも自己決定権は対象者にあり、支援者はサポート役であることを認識することが大切です。

 

 

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まとめ

少子高齢化が進む現代、介護や障がいの分野では地域と共に生きる道が模索されています。制度の枠に当てはめるだけの支援では個人の生き方や望む暮らしを支援しているとは言えないでしょう。
アドボカシ―の活動が加速化する地域包括ケアシステムの構築と共に発展していくことこそが成熟した社会の構築と言えるでしょう。

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