アウトリーチについて教えて!種類は?事例は?

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介護や何かしらの支援が必要な人の全てが自ら相談に行き、制度の活用を自発的に行っているとは限りません。
本当に援助が必要であるにもかかわらず、成す術がわからないために声を上げることができない潜在的な要援助者にこそ支援の手を差し伸べることが必要です。

 

アウトリーチとは

アウトリーチとは本来、手を伸ばす、手を差し伸べるといった意味で、さまざまな場合に用いられます。
介護や福祉の場合はソーシャルワークや福祉サービスの一般的実施機関がその職権によって潜在的な利用希望者に手を差し伸べ利用を実現させるような取り組みのことを「アウトリーチ」と言います。
ソーシャルワーカーなどの支援者は、アウトリーチをすることにより、支援を必要としている人の生活を支えるために必要な制度の活用や社会資源や介護サービスにつなぐ入り口をつくります。
そうすることにより相談窓口で待っているだけでは支援が届かない人にも支援を届けることができるのです。

 

 

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アウトリーチの種類

アウトリーチは福祉だけではなく様々な分野で必要とされています。
分野別にアウトリーチの種類をみていきましょう。

【医療】

医師が病院で診察するだけではなく、往診などをすること。

【社会福祉】

従事者・相談員などが、直接的に訪問して、心理的なケアとともに必要とされる支援に取り組むこと。

【地方自治】

近年、住民主体のまちづくりや町おこしの取り組みが盛んな中で、まちづくりに対する地域住民の声を収集したり、関心を高めたりする活動。

【美術館や博物館】

出張美術展や出張博物館などを通して施設訪問などを行い、対外的な広報活動をすること。自らの存在を周知させるための活動。広く一般に成果を発表する場合や、研究論文を学会誌などに投稿して世に知らせる場合など。

【科学分野】

研究者や研究機関が研究成果を国民に周知する活動。

ここまで、アウトリーチの種類についてまとめてきましたが、アウトリーチを必要とする対象についてもまとめておきましょう。

【アウトリーチを必要とする対象】

・生活上の問題を抱えながらも、自ら援助にアクセスしない接近困難なクライエント。
・問題は複数で慢性化している場合が多い。
・社会的孤立状況にある。
・強い不信感を抱いている。

これらのことから近年では、様々な問題により、専門職からの積極的なアプローチなくしては問題が解決されない人々の存在が多く指摘されています。
そして、自ら声をあげないクライエントの「変化への抵抗」に対しては信頼関係を構築し、状況を変えることへの動機付けを高めることが大きなポイントであり、サービスや専門職への拒絶を解消しなければ、サービス利用に結びつかないということになってしまいます。

 

 

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アウトリーチの例

介護におけるアウトリーチの実例について紹介します。

実例

■対象者 80歳女性Aさん
■家族構成 独身の息子と2人暮らし
■サービス利用状況 介護認定していない

問題点発覚

地元の医院に定期受診しているAさん。月に1度の診察日です。血圧の薬を継続的に飲んでいる他は特に主だった病気はないのですが、診察した医師は異変に気が付きました。
Aさんの体重の変化、身だしなみが整っていないなどが気にかかりました。医師の指示で、生活環境について医院内の相談員がAさんに問いかけてみましたがAさんは「特に何も変わったことはない」と言うのです。
相談員はそれでもAさんの様子から体力の衰えと、何らかの支援の必要性があると判断し介護認定の申請を勧めました。Aさんは近所の人がデイサービスや通所リハビリに通っていることは知っていたので、介護認定の説明を聞き、申請をすることを希望しました。

家族~息子さんの反応~

医院から帰宅したAさんは息子に介護認定申請のことを相談しました。そして、医院に息子さんから電話がかかってきたのです。
 「金のかかることを勧めるな、余計なことをしないでくれ。」
その言葉や口調、何度かのやり取りから昼間からお酒を飲んでいる様子でした。
Aさんは歩行ができますが、膝痛あり付き添いなしでの外出や買い物は1人では出来ません。通院は医院の送迎車で来ています。普段の買い物、食事面はちゃんと息子さんが行ってくれているのか・・そんな不安が相談員にはよぎりました。

地域包括支援センターと連携

医院の相談員は家族に拒否されてしまった以上、なかなか支援を行うことができません。しかし、不安の残るケースですので地域包括支援センターに相談しました。
センターの職員がAさんと電話で介護認定申請の意向を示していると判断したので息子さんに相談することにし、自宅訪問しました。

生活状況の把握

センターが訪問した際の状況です。
・家内はごみが溢れていて足の踏み場がない状況。
・お惣菜の空やお酒やビールの空き瓶が多数。
・台所は雑然としていて普段は料理をしていないような状況。
・息子さんは数カ月前に職を辞めて家で昼からお酒を飲んでいます。

Aさんの年金のほとんどは息子さんのお酒代や生活費に充てられていて、貯金も底をつきそうでした。
Aさんは栄養不足、不衛生に陥っていたのです。

支援の手

センターの職員は数回の訪問をして、お酒が入っていない時に息子さんの話をよく聞きました。働きたくても働き口が見つからない点や、これまでAさんの代わりの家事をこなしてきたことに疲れてしまったと言う息子さんの心情を理解し、これからの暮らしについて相談しました。
そして、以下の制度について説明、手続きの支援をしました。
・生活保護
・介護保険制度
・就職活動支援

ほどなく生活保護がおりることになり、そのことをきっかけにAさんは介護認定を受け、通所リハビリの利用となりました。
息子さんは、ケアマネージャーや介護スタッフなどとの関わりが出来たことで少しずつ対外的なことを意識するようになりました。(掃除や身なり、人との関わり)
働き口も、臨時職員としての職場を見つけることができました。

問題発覚から支援開始まで、医療、行政、介護が関わったケースです。
生活の立て直しまで時間はかかりますが、決して手遅れではないケースでもありました。些細な変化に気が付き、一度で上手くはいかなくても多種職で連携していくことが大切です。

 

注意点

アウトリーチではプライバシーに関わることも多い点からいくつかの注意事項があります。特に、行政が示しているアウトリーチでの注意点を参考にしながらに以下にまとめてみました。

注意点①

地域や経済状況に限らず出来るだけ格差のない支援を提供できるように努めること。

注意点②

支援者の弱い面だけに着目せずに出来ることや、在る能力にも着目して支援をすることでその人がより良い人生に向かうことができるように必要な支援を行うこと。

注意点③

支援者本人のみならず家族の困惑や疲労などが、支援を要している要因となっていないかについてよく知るようにする。
これらの注意点を踏まえて最も基本となるポイントは以下の3つの点であると言えます。

基本のポイント

ポイント1:支援者の気持ちになってみる。
ポイント2:支援者を尊重する気持ち、礼儀を欠かさない
ポイント3:これらを基盤として具体的な支援に結び付ける

 

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まとめ

地域包括ケアシステムの構築が叫ばれている現代ではこのアウトリーチは外せない課題です。

地域で個人を支えることができる社会に向けて、声をあげない潜在的な要援助者の存在を常に意識することが必要です。

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