認知症のリハビリについて教えて!種類は?

Senior woman doing pilates on the floor with foam roller. Elder woman exercising being assisted by personal trainer at gym.

高齢者を労るが故に、家庭内での役割を減らす場合があります。そこには「ゆっくりしてもらたい」「大変そうだから」といった人を思いやる気持ちがあってこその行為なのですが、実は認知機能の低下に繋がる危険性があります。

つまり「何もしないでよい」状況を作ると人は呆然とし、あらゆる能力が落ちて行くという事です。

 

認知症のリハビリとは

認知症の症状は、脳の神経細胞が壊れる事により直接起こる中核症状と、それが原因で起こる周辺症状(以下BPSD=行動・心理症状)とに大別できます。中核症状には、直前に起きた事柄も忘れてしまう記憶障害や時間・場所・人物が分からなくなる見当識障害などがあり、それらの障害が引き起こす焦燥・暴言・徘徊などが周辺症状にあたります。BPSDは人によって現れ方が異なり、元来の性格や環境、人間関係などに起因していると言われています。また、家族にとっては中核症状よりもBPSDの方が負担が大きく、その中でも暴言・暴力・徘徊などによるストレスは非常に深刻で、早期に発見および対応する事が求められます。

リハビリテーションとは、本来「再び適した状態になる」事を指し、一般的には怪我や病気の治療後に元の状態に回復させる為の総合的な訓練として位置づけられています。しかし、一度壊れてしまった神経細胞を元に戻す事はできない為、認知症のリハビリとは中核症状に対してではなく、BPSDの予防や軽減が主な目的となります。つまり、残存している機能を維持し健在もしくは眠っている神経を活性化させる事により、症状の進行を遅らせたり失った神経の代替をさせ、生活力の向上を目指します。

 

 

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認知症のリハビリの種類

運動をすると、脳由来神経栄養因子(BDNF)というタンパク質が脳内で分泌され、脳の神経を成長・保護する事が明らかになっています。つまり、運動と脳の働きは密接な関係にあると言え、それらを訓練する事で相乗効果が期待できます。認知症のリハビリにおいても、考える「脳」・運動する「体」、更に感じる「心」を対象として行われる事になります。それでは、それぞれを対象としたリハビリをいくつか紹介したいと思います。

「脳」のリハビリ→回想法

1960年代にアメリカのロバート・バトラー医師(精神科医)が提唱した心理療法です。個人に対して1対1で行われる個人回想法と、複数人で行われるグループ回想法があります。質問者は、過去の記憶を呼び起こすきっかけを提示し、回答者がそれを思い出し語るよう導きます。

「体」のリハビリ→適度な運動

運動の内容や量は、対象者の状態や目的によって選定します。身体機能が高い方はウォーキングやラジオ体操などを行い、寝たきりの方はベッド上で行える、寝返りや脚上げなど、できる事を継続して行う事が重要です。状態によっては、理学療法士(基本的動作能力の回復を図る専門職)の指導の下、行う必要があります。

「脳・体・心」のリハビリ→音楽療法

音楽療法は、第2次世界大戦期のアメリカにおいて、傷病兵を癒す目的で発展しました。音楽を聴くだけの「受動的音楽療法」と、歌ったり演奏したりする「能動的音楽療法」があり、食事の時間に音楽を流したり、カラオケに行って歌ったりと気軽に実施できます。本来セラピストとしての役割を担うため専門性が高い分野ですが、日本での「音楽療法士」は民間資格に止まり、十分な普及を遂げていません。

「脳・体・心」のリハビリ→作業療法

何らかの作業活動を通して行われるリハビリです。作業内容の範囲は広く、日常生活の中での作業(料理・掃除・洗濯)や創作作業(折り紙・編み物)、集団で行う将棋やゲートボールなど多岐にわたります。医療・介護施設では国家資格である「作業療法士」などがプログラムを作成しますが、自宅でも実施しやすいリハビリテです。

 

認知症のリハビリで期待できる効果

前項で述べたように、認知症のリハビリでは「脳・体・心」それぞれに作用する訓練を行う事が効果の増大に繋がるため、複数のリハビリを平行して実施するのも良いでしょう。上記に挙げたリハビリを例に、それぞれの効果を見てみましょう。

回想法

過去の記憶を思い出そうとする事とそれを語る事により、脳が活性化し認知症の進行を遅らせる事が期待できます。また、思い出した内容が楽しいものほど、心理状態が落ち着く効果が見込めます。また、食事・排泄・移動などの日常的に必要な基本的な動作(ADL)に関する記憶は10歳〜15歳の記憶に含まれているので、ADLを維持する為には、その時期を回想する事が必要です。

適度な運動

体を動かす事により大脳が刺激され、脳が活性化されます。また、運動を通して、関節機能の改善や筋力の維持増進など、直接的な成果もあります。昼間に運動する事により、日中起きている時間を確保し、また適度に疲労する事から夜間の睡眠導入に役立ちます。

音楽療法

音楽を通じて脳の活性化を図り、心地よい音楽を聴く事でリラックスできたり、歌う事でやストレス発散の機会が得られます。また音楽療法には、気分や感情と同類の音楽を聴く方が治療的効果が高くなるという「同質性の原理」というものがあります。音楽療法はあくまでも補助的な治療に用いられ、直接ケガや病気を治す効果はないとされています。

作業療法

脳・体・心の働きを要する為、バランスの取れた包括的なリハビリと言えます。例えば、作業療法として料理を行った場合、「メニューや作り方を考える」「実際に体を動かし料理する」「味覚にて満足感を得る」に至ります。料理を振舞う事により「楽しみを共有する」という心理効果も期待できるでしょう。

 

 

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注意点

一般的なリハビリと違い、認知症のリハビリは一時的な活動ではなく、継続して行う事が最も大切です。その為に何に注意しなければならないか、リハビリの各段階ごとに考えてみましょう。

リハビリ実施前

意欲を効果的に引き出す為に、より具体的な目標を掲げます。その目標と対象者の状況に合った内容を検討し、納得した上で実施に移行するのが好ましいです。その際、「無理なく継続的に実施できる」内容を心がける必要があり、過度なリハビリの計画は禁物です。また、問題視されている周辺症状がある場合は、その動機を究明する事がリハビリ内容決定に欠かせません。

リハビリ実施中

ここでも「継続的に行えているか」に着目します。モチベーションを保つには、リハビリの効果が認識できる事が望ましいですが、重度の認知症の方や、機能の維持が目的の場合は、確たる成果を獲得するのは難しいでしょう。そういった場合は、「楽しく行えているか」「意義を感じられているか」などに重点を置き、介助者が介入し過ぎてリハビリの妨げになっていないか注意します。また、対象者の意思を尊重したり実施している活動を褒める事も、リハビリに対する意欲の向上・維持に繋がります。

リハビリ実施後

実施しているリハビリについて、定期的に効果を審査します。最初に掲げた目標に向かっていないと判断される場合は内容を見直し、対象者の状態変化により目標自体に変更が必要な場合は、目標を再検討します。また、効果が認められている場合においても、同じ目標のまま継続するか、新たな目標を設定する事により再スタートを切るかを吟味します。

 

 

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まとめ

「リハビリなんてやったって意味がない。」、先日ある高齢者に言われました。確かにその通りかもしれません。正直、認知機能の向上どころか、進行を完全に止める事すらできません。誰も年齢を止める事はできないのです。しかしその中でも、穏やかに過ごす事はできます。

 

穏やかに年を重ねる為に行う認知症のリハビリは、その家族までをも救うのです。

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