高齢者の食事に気をつけるべきこと5選を大紹介!

Group Of Senior Couples Enjoying Meal Together

バランスよく栄養を摂取する健康上の重要性は、年を重ねるごとに痛感します。しかし、何でもよく食べる事が良いかというと、そうではありません。高齢者の場合、高血圧などの症状によっては塩分を控えなければならないし、糖尿病の疑いがあれば血糖値への配慮を要します。入れ歯の不具合や噛む力の低下によっては硬い食べ物は噛みにくいし、飲み込みの反射(嚥下反射)が鈍くなっている可能性もあります。このように高齢者の食事を考える際、特別な注意を払う必要があります。

今回は高齢者の食事についてご紹介したいと思います。

 

食事の際の基本的な介助

高齢者の食事介助について「食事前」「食事中」「食事後」の3段階に分けて考えてみたいと思います。
まず「食事前」についてですが、本人の状態をよく観察し把握する事から始まります。意識や健康状態、口の中の状態、尿便意の有無や手指の清潔確認などです。しっかり覚醒した状態で食べないと飲み込めなかったり、熱があったりしたら食事内容自体を見直したりします。口の中は清潔で適度に湿っているか(乾いていると飲み込みにくい)、入れ歯は適切に装着されているかを確認します。食事に集中できるよう、トイレは事前に済ませておき、手を洗う。メニューについても本人の好みや食べられる形状、必要な栄養素を考慮します。また、テーブルや椅子の高さ、握りやすいスプーンやエプロンの用意、室温の管理など、環境の整備にも気をつけます。
次に「食事中」には、本人の横(片麻痺がある場合は麻痺側)に座り介助をします。食事とは、普通自分が食べたい物から食べるが、口の中のウォーミングアップとして汁物などから食べるようにします。また水分の多い食べ物には、胃酸の分泌を促す効果もあります。主菜→副菜→水分など、順序よく食べるのが好ましいが、これも本来食べる本人が決定します。介助者はちゃんと噛めているか一口の量(スプーン1杯が定説)を確認し、飲み込みづらそうであれば水分補給を勧め、食事が必要分摂取できるよう介助もしくは誘導します。
「食事後」にも、再度本人の状態を確認する。気分や顔色に問題が認められなければ歯磨きなどを行い、口の中を清潔に保つ様にします。食べたものが胃から逆流するのを防ぐため、しばらくは横になるのを避ける。また食べた食事内容と量を確認できるよう、記録に残す事も肝心です。

 

 

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食事を摂るときの姿勢について

私たちの喉は、発声や呼吸時には空気が通り 食事の際には食べ物が通ります。この道は喉頭という部分で分かれ、喉頭蓋という器官がその道筋を決めています。空気が通る気管は前方に位置しているため、気道を確保する際は顎を上げることになりますが、その状態では後方に位置する食道(食べ物が通る道)が塞がれ、飲み込みづらくなります。このような喉のメカニズムにより、食事時の姿勢は飲み込み機能に大きく影響します。

椅子に座って食べる時

座る姿勢(座位)が保てる場合は、食べたものが胃に落ちる(上から下に落ちる)などの原理もあり、着席して食事をします。座る位置は浅すぎず深すぎず、床に足の底がしっかり着くよう真っ直ぐ座ります。これにより足底から顎に力が伝わり、噛む力が入ります。

ベッドで食べる時

食堂まで移動ができない場合などは、ベッド上で食事をします。その際も、やはり椅子に座った姿勢になるよう注力します。背中や膝の部分が持ち上がるベッドを使用し、適した角度(身体状態により30~90度)まで上げます。この時、背もたれ部分から持ち上げるとベッド下部にずり落ちてしまうため、膝下部分から上げ、その後背もたれ部分を上げます。座位が保てない場合は隙間にクッション等を入れ、また足底部分にも入れると姿勢が安定します。

 

食事の時間について

必要な栄養と量を吟味して食事を用意することから、やはり完食が望ましいです。しかし、食べ終わるまでに要する時間が長くなれば、それだけ体力を消耗し、消化器官への負担も大きくなります。一般的に食事の時間は45~60分がよいとされていますが、本人の状態によっては、完食する意義と体力消耗の不安とを天秤にかけるケースもあります。いずれを取るにせよ、効率よく食事ができるよう、やはり食べやすいメニューが求められます。
また施設などでは、1人の職員が10人分の配膳から食事介助、歯磨きまでを行うケースも少なくなく、食事自体には30分もかけられないという実情もあります。

 

 

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高齢者に食べやすい食事、食べにくい食事

加齢による筋力低下の理由として、筋繊維の減少に伴う筋肉の萎縮が挙げられます。一般的に40歳頃から筋萎縮が始まり、50歳で20歳のの10パーセント、80歳では30パーセント減少すると言われている。食べ物を噛む時に使われる顎の周りの筋肉(咀嚼筋)や、飲み込む時に使われる舌と喉付近の筋力の衰えなどを加味し、高齢者にはどうような食べ物が適しているのか考えたいと思います。
高齢者が食べやすい食事は、「軟らかくて飲み込みやすいもの」であり、おかゆやパンがゆなどおかゆ状のもの、ハンバーグなどミンチ状のもの、ゼリーや水羊羹などゼリー状のものなどがあります。
また食べにくい食事は、イカやこんにゃくなど弾力性があるもの、ゴボウなど繊維が多く硬いもの、パンや海苔など口の中に貼りつくものがあります。加えて、サラサラとした液状のものも、むせ込む原因となるので注意しなければなりません。

高齢者に必要な栄養素及びそのポイント

高齢者は運動不足などにより食欲が減退し、また「食べる力」や「食べる気力」が落ちて、簡単な食事で済ませてしまいがちです。たとえ食べる量が少なくても、効率よく栄養が摂れるような食事を心がけたいです。以下、不足しがちな栄養素を列挙し、考察してみます。

たんぱく質

たんぱく質は胃でアミノ酸に分解されてから吸収され、再び体内でたんぱく質に合成されます。たんぱく質は筋肉や内臓、皮膚、爪、髪など体の様々な部位を形成する材料となります。運動量を保ち、転倒や寝たきりを回避するためにも、たんぱく質の摂取は重要です。

カルシウム

加齢に伴い、骨の強度が低下し、骨折をしやすくなります。ビタミンDはカルシウムの吸収を促す効果があるので、合わせて摂取するとカルシウムを効率よく体内に取り入れることができます。

食物繊維

腸内の排泄物を押し出す働き(ぜんどう運動)が鈍くなると便秘を引き起こします。食物繊維は便秘の解消に効果的であることはよく知られているが、それには2種類(水溶性食物繊維、不溶性食物繊維)あり、それぞれの特性をよく理解し摂取する必要があります。水溶性食物繊維は水に溶けて水分を腸へ運ぶので、便を軟らかくします。不溶性食物繊維は水に溶けず、水分を含んで膨らみ、腸を刺激することでぜんどう運動を促します。どちらかを摂り過ぎると、便が必要以上に軟らかくなり下痢になったり、逆に硬くなり過ぎ便秘になります。両方をバランスよく摂取(水溶性1:不溶性2)することが大切です。

水分

歩行などに難がある高齢者は、トイレが近くなる事を敬遠し、水分摂取をあまりしない場合があります。また、喉の渇きが感じづらいなどの要因も考えられます。脱水の初期症状として足がしびれ、また肩や膝などの関節に痛みが発生します。夏場や発熱時は熱中症や脱水症状を引き起こす可能性が増すので、特に意識して水分を摂るようにします。

塩分

高齢者は味覚が鈍くなり味の濃い食事を好む傾向がありますが、血圧の上昇にも繋がる塩分の摂り過ぎは控えなければなりません。しかし、過剰な減塩は食欲を低下させるだけでなく、夏場などは汗で塩分が放出されるため、適度な摂取に留意します。

 

 

 

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高齢者向け食事の調理ポイント

高齢になると、噛む力の減少や持病などによっては、食べられるものに制限が出てきます。「美味しいものを食べられる」生活を、色々な工夫を凝らし継続したいです。

食べやすくする工夫

口の中での噛む作業を軽減するために、一口大の大きさに切ります。野菜はよく加熱し軟らかくし肉は叩いたりし、切れ目を入れても噛み切りやすくなります。根菜は繊維に対し垂直切ると、噛み切りやすくなります。

飲みやすくする工夫

サラサラした液体はむせ込みやすいので、とろみ剤などでとろみをつけます。舌と顎で潰せるくらい食材を軟らかく煮ます。滑らかになるよう裏ごししたりミキサーにかけたりするのもよいです。

本人の嗜好を重視

誰でも好きなものを好きなだけ食べたいものです。それは高齢者においても、当然同じことが言えます。しかし、健康を案じ食事に制限がかかることがしばしばあります。食べたい物を食べるにはどうしたらよいか、健康管理や体力の維持増進など、総合的に検討する必要があります。

季節料理

認知症の中核症状の一つに見当識障害というものがあります。これは、時間や季節、場所や人などが分からなくなる障害です。四季がある日本において、折々の食材が味わえるのは特権であり、味覚を通してそれを楽しめます。また、各季節において収穫できる食材、例えば夏場のキュウリは発汗時に不足しがちな水分とカリウムを含んでいるなど、その時期に必要な栄養を摂取するのに適しています。

見た目

「食事は目で楽しむ」とはよく言ったもので、料理は五感をバランスよく刺激すると言われています。硬いものが噛めないなどの理由から、食事をミキサーにかけ、ドロドロの状態(ミキサー食)にすることがあります。ミキサー食は見た目の華やかさに乏しく、鮮やかな色彩が失われる。このような場合でも、ミキサーにかける前に食事を見せたり、刻んだパセリをかけ色味を出すなど、「五感に訴える食事」を意識することが不可欠です。

 

 

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まとめ

生きていくために、毎日欠かせない食事。
日々きちんとした食事を摂ることこそが、病気の予防や治療であるという「薬食同源(医食同源)」という思想があります。「生きる」と「食べる」は、その両方で支え合い成り立っています。すなわち「食べる」という行為を果たす事こそが、全うに「生きる」という事ではないでしょうか。私たちは生きている限り食べ続けられるよう、努めなければなりません。

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