介護の人手不足を現役介護職員が考えて見る

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介護保険制度が施行された2000年以降、介護職員の数は年々増加しています。当時55万人程度しかいなかった介護従事者は、2015年には171万人にまで増えました。

2025年度には介護職員が約253万人必要になるとされています。それに対し供給見込みは約215万人でありおよそ38万人が不足する見込みです。

今回はそんな「介護の人手不足」を考えてみたいと思います。

 

介護の人手不足とは

2025年には団塊の世代が75歳以上になります。75歳以上になると統計的に要介護者の数が増えるため、要介護者の絶対数が確実に増加します。介護職員の数もそれにあわせて増えていかなければなりませんが、厚生労働省がだしている予測だと最低でも38万人が不足します。

少子化によって全産業で働き手の不足が心配されているなか、3Kとよばれる仕事は忌避される傾向にあります。今後もこの傾向は続くかもしれません。3Kとは「汚い」、「きつい」、「危険」の頭文字をとったものです。さらに介護の現場ではこれに他のKを加えて4Kということもあります。つまり「給料が安い」、「腰が痛い」、「記録が多い」、「定時に帰れない」、「結婚できない」の4つです。

介護は人の生活のお世話をするという重要な仕事です。生活とはプライベートそのものです。日常の食事、排泄、入浴といった普段は他人に見せないことを他人に見せさらに依存するということです。要介護者にしてみると、どのような介護を受けるかで最晩年の人生の質が決まるといってもよいでしょう。

介護は人のプライベートに密着する仕事です。厳重な守秘義務が求められます。また個々の家の事情に合わせた家事の技術が求められます。家事など誰にでもできることと考えられがちですが、他人の家のやりかたに合わせながら行う必要があり高い共感力が必要とされます。

もちろん生理学、運動学といった医療の知識が必要とされますし、他には心理学、介護制度の知識などの勉強も必要です。また身体介護は重労働なので自分の体を痛める危険性も高い仕事だと言えます。

このような仕事にもかかわらず、介護職の給料はよいとは言えません。隣接する職種の看護師などとくらべても、給与や他の待遇では劣ります。そのため、国が後押ししているわりには成り手が少ない、というのが現状です。

 

 

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介護の人手不足原因

訪問介護員として従事するために必要な、介護職員初任者研修や訪問介護員養成研修を修了している者は、平成24年までに約380万人存在します。介護福祉士の資格登録者も約120万人います。このように資格取得者の数だけをみるとけっして少ないとは言えません。それではなぜ介護現場では人手不足になるのでしょうか。

これを考えるには外的要因内的要因にわける必要があります。

外的要因

外的要因にあるのは介護報酬の壁です。介護保険スタート時の介護報酬は3.6兆円でした。保険料は全国平均で2911円。それが平成28年度には10兆円近くになり、保険料の平均も5144円になっています。これは介護保険サービスの利用者の増加が原因です。

財源は国や地方自治体の税金、それにプラスして保険料で成り立っています。つまり青天井にあげていくわけにはいかないということです。このままいくと月額の保険料負担が8000円を超えると言われています。こうなると制度の維持そのものがあやうくなります。

介護の仕事は労働集約型と言われています。つまり人件費がほとんどを占める産業です。よって介護報酬介護従事者の給与と言えます。介護報酬があがらないと介護従事者の給与もあがらないという構図です。しかし、上でみたように国は介護報酬をいかにおさえるかという方向を見ています。

内部的要因は次の項目でご紹介します。

 

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介護の人手不足対策

このように外的要因には国の意向や税金といった大きな場マクロの出来事がからんできます。こうしたマクロに切り込むのは難しく、人手不足の対策は打ちにくいものです。そこで内的要因に目を向ける必要があります。

内部的要因

内的要因とは小さな場ミクロで考える人手不足の要因です。介護現場は慢性的な人手不足と言われます。たしかに離職率が高い現場はつねに介護職が不足している状態に陥っています。しかし、すべての介護施設で離職率が高いわけではありません。

中にはほとんど職員が辞めない職場もあります。この違いを生んでいるのはなんでしょうか。給与がよいから、というのは理由でありません。介護報酬は単位制になっており、同じサービス種の場合、収入に大差がつかないからです。一言で言うと、「良いケアをしている現場」かどうか、ということです。

介護現場は他産業と比べると平均給与額が低いのは周知の事実です。それを分かっていながらなぜ介護の仕事を選んだかというとやりがいを求めているからです。やりがいとは良い仕事をしたいよい介護をしたいということです。

このやりがいを満たせる職場なら人は簡単には辞めません。逆にいうと、これだけ離職率が高い介護現場ではやりがいを満たせるよい介護ができていない、ということになるかもしれません。ミクロ視点の人手不足対策とは「良いケアが提供できる職場環境を作ること」と言えるでしょう。

 

 

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介護の人手不足予防

人手不足を予防するためには、雇用者の経営努力と被雇用者の賢い選択が必要です。

・雇用者の経営努力

介護職の離職率の高さが経営者の悩みのタネです。人が出たり入ったりスル現場ではケアサービスの質が保てません。それはケアの質以前に、介護事故を起こしやすくなる原因となります。一昔まえなら訴訟する家族はほとんどいませんでした。しかし、現在は訴訟にまで発展する例が増えています。今後はもっと家族からのクレームや訴訟の問題が増えると思われます。人材について安易な考えをしている経営者は、痛いしっぺ返しを受ける可能性が高くなります。

まず職員を簡単に辞めさせないことが経営者には求められます。介護知識や技術の向上に積極的にはげみ、職員がやりがいが感じられる職場の土壌作りをすることが肝要です。求人を出すのにも経費がかかります。その分を職員を辞めさせない分として使うという発想の転換が求められます。

・被雇用者の賢い選択

被雇用者介護従事者はまず自分が働く職場をきちんと選定することが必要です。つねに求人を出している先は離職率が高いということですので、そういうところは避けるとか、リサーチが大事です。それでも実際に入職してみないとわからない部分もあります。もし入職した先がブラック企業だったらすぐに辞めることです。介護現場は売り手市場です。転職のハードルは高くありません。
しかし、転職を繰り返してもよい職場に出会えない場合もあります。そういう場合は強い意思をもって自分が権限をもてる地位につくまで我慢し、職場を変えていく努力をする必要もでてきます。これには我慢強さと先を予測する先見性が求められます。

 

 

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まとめ

以上みてきたように、介護の人手不足を解決するのは一朝一夕ではいかないでしょう。介護報酬の自然増は不可避ですが、それが介護従事者の給与・待遇アップには結びつきません。逆にさらに厳しい状況になる可能性があります。
しかし、介護は誰にでも関係する問題です。人生の最晩年をよりよく過ごすためには、介護の人手不足問題について大勢の人が考えていくべきだと思います。

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