認知症の中核症状を知って備える!

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厚生労働省が発表している推計によれば団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。

私たちにとっての身近な病気となった認知症。その中核症状についてみていきましょう。

 

Contents

認知症の中核症状とは

認知症の中核症状とは認知症になると必ずみられる認知機能の障害です。認知症の直接の原因である脳の細胞が壊れてしまうことによって起こる症状です。
中核症状には記憶障害、実行機能障害、失行、失認、失語などがあります。
これらの認知機能は、視覚や聴覚から外部から入ってきた情報を記憶したり、考えたり、判断したり、人とコミュニケーションをとったりと日常生活に欠かせない能力です。

では、周辺症状とはなにか・・・
周辺症状とは「行動・心理症状」(BPSD)ともいい、認知症になったすべての方に必ず見られるとは限らない症状のことを言います。周辺症状は徘徊、幻覚、妄想、暴力、暴言などを指し、日常生活営むことや介護者が大変だと感じる要因になります。
周辺症状は中核症状と本人の性格や環境に起因するとされ、周囲がその理由を理解して適切な対応をとることで本人が穏やかに生活する事が可能となります。逆に理解されない事で周辺症状がより悪化し介護が困難となるケースもあります。

 

 

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認知症の中核症状の種類

認知症の中核症状の種類についてみていきましょう。

【記憶障害】

認知症で早くからみられる障害では、新しいことを覚えられなくなってしまます。
さっき聞いたこと、したことを記憶することが難しくなります。次第に、覚えていたことも忘れるようになっていきますが、自分が子供の頃の記憶など、昔の出来事は比較的覚えています。

【見当識障害】

見当識とは今がいつ(時間、年月日、季節)、ここがどこ(場所、何をしているのか)という、自分が今、置かれている状況を把握することです。自分と他人との関係性の把握も見当識に含まれます。
見当識の「いつ」が障害されると、今が何時なのかがわからなくなるので、「予定通りに行動することができない」などがみられます。また日にちもわからなくなり季節感も薄れ、「季節に合わない服装をする」ことがみられます。
「どこ」が障害されると、「自分の家のトイレの場所がわからなくなる」、「ものすごく遠いところに歩いてでかけようとする」などの行動がみられます。
自分と他人との関係性が障害されると、自分と家族との関係や、過去に亡くなったという事実もわからなくなり、「自分の息子を『お父さん』と呼ぶ」ことや、「亡くなった親に会いに行くと言う」ことなどがみられます。

【理解・判断力の低下】

理解することに時間がかかるようになり、一度に2つ以上のことを言われる、早口で言われるなどすると理解することが難しくなります。また、いつもとは違う出来事が起こると対応できず混乱することがみられます。目に見えないものが理解しにくく使い慣れた電気器具でもどうすれば良いのかがわからなくなります。
あいまいな表現や抽象的な言い方では理解や判断が難しくなり、例えば「雪が降っても大丈夫な服装をしてね」と言われても理解きないので、「セーターとコートを着てね」と具体的な指示が必要になります。善悪の判断もつきにくくなります。

【実行機能障害】

実行機能障害では、物事を計画を立てて行うことが難しくなります。
食事の支度をする際も、冷蔵庫にあるものを確認してメニューを考え、足りないものを買い出しに行き、冷蔵庫にあるものと合わせて、予定していたメニューをつくることを一行います。仮に買おうとしていたものがスーパーで売っていなくても、他のもので代用するなど、予想外のことが起こっても他の手段を考えて適切な対処ができます。通常はこのように効率を考えて同時に進めていくことができますが、実行機能障害では、「○○と△△でみそ汁を作る」、「炊飯器のスイッチを押す」ことはできても、必要な情報を合わせて遂行することが難しくなります。

【言語障害】

言葉の理解・表出が難しくなります。音として聞こえていても、言葉や話として理解できなくなります。
また、自分が思っていることを言葉として表現する、相手に伝わるように話すことが難しくなります。

【失行・失認】

失行は、「服を着る」、「箸を使ってご飯を食べる」など日常的に行っていた動作や物の操作が運動機能の障害がないにもかかわらず行えなくなります。
失認は、自分の身体の状態や自分と物との位置関係、目の前にあるものが何かを認識することが難しくなることです。半側空間失認では、自分の身体の半分(左側または右側)の空間が認識できず、「ご飯を半側だけ残す」、「片方の腕の袖を通し忘れる」などがみられます。

 

認知症の中核症状の対策

記憶障害に対するポイント

①話すスピードを考えましょう

→話すスピードが早すぎないかを気を付けながら会話をしましょう
早口や大きな声では、認知症の人は話の内容を受け止めることができません、単に「音」として感じてしまうこともあるようです。

②一度に多くのことを伝えようとしていませんか

→長い文章で物事を一度に伝えようとしていませんか
一度の沢山の情報を受け入れることは難しいので、一つ一つ伝えましょう。一気に長い文章で話すと拒否反応、諦めの気持ちになってしまい、全てが分からなくなることがあるようです。

③伝える工夫をしましょう

→繰り返し伝えることが大切
一度伝えて安心せずに、繰り返し伝えましょう。
同じことを繰り返し伝えることで安心感を抱いたり、何となく憶えることができるかもしれません。
→目で見て気付けるように工夫していますか
『忘れるけど字は読める』、『書いてあるものを見ると安心できる』 ということがあるので文字を読む力や視覚に訴えかけてみましょう。

見当識障害

見当識障害に対するポイント

①日付や時間、場所が必要な時に伝えられていますか

→ 時間や季節などを必要な時に伝えることは、本人が自分の状況を把握することを助け、安心してもらうことにつながります
例)「もうすぐ昼ごはんですよ」と伝え、昼食を配膳する時にまた「はい、昼ごはんです」と伝えると、「ああ、今はお昼なのか」と感じることができるかもしれません。

②どこを見れば良いかがわかりやすい空間になっていますか

→日常空間や言葉かけがあいまいで分かりづらくなっていませんか
雑然としている、動線を意識しない空間ではどこを見て良いかがわからない、頭の中や気持ちもすっきりしません。

実行機能障害

実行機能障害に対するポイント

①今、何をしていて、次の動作が何かが分かるような言葉かけを心がけよう

→段取りがわからないので何かに取り組んでいても不安な気持ちでいる、集中できないので途中で途切れるという苦しさを理解しましょう
適時、言葉がけや手伝いをし、次の動作に繋がるきっかけづくりをしましょう。

失行

失行に対するポイント

①症状によってどうしても使えない道具や出来ないことがあることがあります。

→道具や方法は本人が「できる」を支援者が選択し活動を支援しましょう。
成功体験の積み上げが大切です。

②声をかけてよいかどうか判断しているか

→たくさん声をかけるのが良いことだと思われがちですが、失行の方に対しては、スムーズな動作を妨げてしまうことがあります。
声のかけすぎは指示的になって相手を混乱させかねません。

失認

失認に対するポイント

①どのような時に日常生活で不便が起きるのかを個別に理解しましょう

→半側空間無視の場合は、一人ではうまく食べ物を食べることができません。
病気や後遺症、機能不全による起きる不便さを医学的にも支援者は理解しておきましょう。

②目に映る光景が普通の人と異なる場合があることを認識しましょう

→環境の変化や慣れない場所に対してどのように感じるかを理解しましょう。また慣れた環境下でも、異なる感覚を抱いていることもありことを理解し、気持ちに合わせた対応をしましょう。
床の色が変わったり、敷物によっては『穴に落ちる』と怖がったり、壁との距離感を上手く測れなく狭い部屋では『壁が襲ってくる』と感じることもあります。

失語

失語に対するポイント

①話し方のスピード、トーンや声の大きさに配慮していますか

→話し方を工夫しながら、身振りや手振りも交えて意思の疎通を図る必要があります。
理解できないが笑っている、分かったそぶりをしているということもあります。

②会話が難しくなっていくことに不安を感じていることを理解していますか

→多くの認知症の方は、かなり進行した時期まで言葉の理解力がある程度保たれます。
発言には十分注意する必要があります。
『頭ではわかっているけれど、言葉が出るのが遅くなった』
『意味は分かるがなかなか言葉で説明できなくなった』 などの不安を抱いていることもあります。

 

認知症の中核症状の注意点

認知症の中核症状である記憶障害によって人の名前や顔が思い出せなかったり、日付や直前の出来事がわからなくなってしまいます。この記憶障害によって日常生活の多くの場面で本人は暮らしにくさと不安を感じてしまうことになります。
そして、その気持ちのために塞ぎこんで無気力になってしまったり、イライラが募って怒りっぽくなってしまう可能性もあります。こうした心理面の変化が行動に移り悪循環に陥らないためにも、不安や焦りを取り除き、安心感を持ってもらうことが大事です。
すなわち認知症の人は焦りや不安の最中にある事を知り本人がとった言動に対して否定せずに受け入れる態度で接しましょう。
例えば、トイレで下着を汚してしまったとします。汚れた下着を便器の中に浸したり、手を便器の中に入れようとした時、「何をやっているの?汚いからやめて。」と言いたくなる気持ちが家族や介護者には芽生えます。しかし、「あら、洋服を洗濯しようとしてくれたのね、ありがとう」と反応することが重要です。これによって本人は自己嫌悪や疎外感を感じることなく、安心感を覚えてくれるのです。
認知症の中核症状を正しく理解することはとても大切です。

それによって適切に対応することできそれが周辺症状を防いだり緩和したりすることに繋がっていきます。

 

 

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まとめ

認知症は私たちにとってごく身近な病気となりました。また、健常者と認知症の中間レベルにあると考えられている軽度認知障害(MCI)を患っている人も多くいると考えられています。
MCIでは、認知機能(記憶力、言語能力、判断力、計算力、遂行力など)に多少の問題が生じていることが確認できますが、しかし日常生活に支障がない状態のことです。

MCIの段階で認知機能の低下にいち早く気づき、対策を行うことが認知症予防にはとても大切です。

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